研究課題
昨年までの予備実験に基づき、ヒト脂肪組織における遺伝子解析を行った。袖状胃切除術を施行された高度肥満者と早期胃癌のため胃切除術を施行された非肥満者の、胃大網の脂肪組織を採取した。抽出したmRNAを精製し遺伝子発現を検討した。代表的な炎症性サイトカインであるTNFαの発現は、高度肥満者では非肥満者の4.2倍の増強を認めた。また自然免疫を評価する意味で検討した樹状細胞マーカーのCD11cの発現は、肥満者で2.3倍上昇を認めた。次に小胞体ストレスマーカーのであるCHOPとGRP78の発現を確認したところ、高度肥満者でCHOPは1.7倍、GRP78は2.0倍に、いずれも有意に増加していた。以上の結果から、仮説通り日本人高度肥満者の内臓脂肪組織では炎症反応の亢進と小胞体ストレス応答の亢進が認められた。並行して、脂肪細胞での小胞体ストレス応答亢進から導かれる炎症反応のメカニズムについてin vitroで解析を行った。培養脂肪細胞3T3-L1にツニカマイシンによって小胞体ストレスを誘導するとPPARγやアディポネクチンの発現が抑制された。すなわち脂肪細胞の分化が抑えられ、インスリン抵抗性を増悪する方向に脂肪細胞の質が変化していることが示唆された。この細胞でCHOPをノックダウンしておくことで、ツニカマイシン添加にともなうPPARγやアディポネクチンの発現低下が抑制された。したがって、健康的な脂肪細胞の質の維持には、CHOPを鍵とする小胞体ストレスの調節が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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