研究課題
本研究では初年度に、マウスに高脂肪食を与え代謝異常症を誘導し、その治療としてGLP-1アナログを用いて治療を行い、代謝プロファイル、腸内細菌叢の解析および腸管免疫担当細胞の解析を行った。次に無菌マウスに同様の解析を行い、GLP-1アナログによる治療で認められた代謝異常症の改善の程度を比較した。雄性C57BL/6およびBalb/cマウス(4-6週令)に対し、通常食または高脂肪食を与え、それぞれに生理食塩水(対照)、またはGLP-1アナログを投与した。高脂肪食の投与により通常食に比較して体重の増加、血糖値の上昇、脂質プロフィルの悪化が認められ、GLP-1アナログの投与により体重、摂餌量は低下を認め、血糖値は低下、脂質プロファイルの改善が観察された。腸内細菌叢は高脂肪食の投与によりバクテロイデテス門の細菌の減少が認められた。GLP-1アナログの投与により同減少は低下の傾向が認められた。腸管免疫担当細胞の検討では、腸管マクロファージの表現型が高脂肪食の投与で特に変化が顕著であり、その変化の程度はGLP-1アナログの投与により低下の傾向が認められた。無菌マウスの検討では、高脂肪食の投与による体重の増加は有意に低下が認められ、GLP-1アナログ投与による体重の抑制効果も軽減していた。GLP-1アナログの投与による血糖値、脂質プロファイル、腸管免疫担当細胞に対する影響も無菌マウスでは軽減が認められた。
2: おおむね順調に進展している
本研究で初年度計画をしていた検討はほぼ完了をしている。無菌動物の維持・検討が来年度以降も引き続き重要な要素であり、初年度でも十分に時間を投じて管理を行った。
初年度と同様の検討を、生来リンパ球を有さないCB17-scid/scidマウスおよび対照マウスに対し施行する。本検討から免疫担当細胞のGLP-1アナログのエネルギー代謝異常改善効果に対する意義を明らかとする。そのうえで、これまでの検討でGLP-1治療に重要と考えられた腸管免疫担当細胞に対する除去抗体を高脂肪食を与えた雄性C57BL/6マウスに投与し、体重、血糖値、脂質プロファイル、腸内細菌叢などを経時的に追跡し代謝異常の改善を確認する。またその腸管免疫担当細胞群を通常食群、高脂肪食群からソーティング抽出し、遺伝子発現を比較検討する。ただし想定していた免疫細胞群が、むしろ防御的に作用している可能性もありえるが、その場合は通常食マウスに同中和抗体を投与し、代謝指標の悪化を明確に示すことで免疫担当細胞の意義を明らかとする。上記の検討時には腸内細菌叢の変化も同時に行うが、無菌マウスに腸内細菌を移植することで、それらの腸内細菌が能動的にエネルギー代謝異常症の病態に関与している可能性の検討も進めて行く。
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