研究課題/領域番号 |
15K09418
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮崎 拓郎 昭和大学, 医学部, 講師 (80398693)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CWC22 / エクソンジャンクション複合体 / pre-mRNAスプライシング / 動脈硬化症 / カルパイン-6 |
研究実績の概要 |
CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集によりCwc22の第2エクソン以降を欠損させたCwc22欠損マウスの作出を行った。2度のインジェクションで変異マウスは得られなかったが、gRNAの配列を変更して再度インジェクションを行ったところ9ラインのファウンダーが得られた。 これまでの検討で、カルパイン-6が炎症性マクロファージにおいてCWC22の核移行を制限し、これがRac1を含む一部遺伝子のmRNAスプライシング効率の低下に繋がることが明らかとなっている。本研究において、カルパイン-6野生型ならびに欠損マウス動脈硬化病変マクロファージにおいてCWC22の発現分布を検討したところ、野生型で同分子はほとんど核局在が認められなかったが、欠損型では多くが核内に移行していた。動脈硬化病変におけるRac1のスプライシング効率を検討したところ、カルパイン-6の欠損により同スプライシング効率の増加が認められた。骨髄移植実験により、スプライシング効率は骨髄細胞のみに依存することが明らかとなった。また、カルパイン-6の欠損によりRac1タンパク質発現は増加した。免疫組織化学法においても、カルパイン-6欠損に伴う動脈硬化病変マクロファージにおけるRac1タンパク質発現の増加が認められた。ヒト剖検サンプルを用いてカルパイン-6およびCWC22の発現を免疫組織化学的に検討した。高度に進展したヒト動脈硬化病変においてはカルパイン-6が泡沫化マクロファージに局在し、CWC22の核移行が低下する傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CWC22欠損マウスのファウンダー作出に成功し、動脈硬化症におけるCWC22の機能解析についても進展が認められたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに作出したCwc22欠損マウスの表現型解析を行う。マウス樹立後、一般的な表現型(体重、組織重 量、血球数・組成、血液生化学検査、病理組織学的解析等)を確認する。 Rac1以外の責任遺伝子群を探索する目的で、TNF-α刺激を行ったCwc22野生型および欠損マ クロファージより抽出した total RNAのトランスクリプトーム解析を行う。スクリーニングが目 的であるので、マウス5匹分の細胞をプールして、再現性を踏まえて各群2例ずつ実施する。 候補遺伝子の同定: ゲノムDNAを除去したtotal RNAより作製したcDNAについて、次世代シーケンサーにより網羅的発現解析を行う。Cwc22欠損により、近接するエキソン部と比べて顕著な発現上昇を示すイントロン部を責任遺伝子(候補遺伝子)とする。一方、 エキソン・イントロンの発現変動が明らかに同調している場合、何らかの転写活性の変化に起 因すると考え、これを解析から除外する。 責任遺伝子の全身的機能解析:候補分子が実際にCWC22の支配下にあるか、野生型および Cwc22欠損マウスにおいて候補分子の全身的発現分布・発現変動を免疫染色法またはウエスタ ンブロット法等を用いてタンパク質レベルで確認する。その際、生理的条件下と炎症時(TNF-α の全身投与時)で比較を行う。 マクロファージにおける責任遺伝子の機能解析:カルパイン-6または Cwc22 欠損骨髄由来マクロファージおいて、同定した責任遺伝子(候補遺伝子)のタンパク質発現が TNF-α刺激により変化するか確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
28,156円の次年度使用額が生じたが、直接経費の大半を使用しており、また、研究も概ね計画通り遂行していることから、計画自体に変更はないと判断する。
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次年度使用額の使用計画 |
28,156円は次年度物品費(試薬代)として使用する予定。
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