Corticotropin-releasing factor (CRF) は、ストレス反応における視床下部―下垂体―副腎 (HPA) 系賦活化の主要な因子である。Kisspeptin は、leptinの代謝やエネルギー消費作用を仲介しているとされる。近年発見されたpyroglutamylated RFamide peptide (QRF P)は、代謝や摂食行動に重要なホルモンとされる。QRFP受容体であるGPR103は、ストレス応答の中心である視床下部室傍核(PVN)で の発現が報告され、ストレス反応への関与が示唆される。本研究では、視床下部4B細胞を用いて、kisspeptin及びQRFPによるCRF遺伝 子発現調節機序について検討した。 視床下部4B細胞において、kisspeptin受容体 (Gpr54)とQRFP受容体 (Gpr103) mRNAの発現を確認した。100 nM kisspeptin添加により 、CRF mRNA及びarginine vasopressin (AVP) mRNAはそれぞれ有意に増加した。100 nM QRFP添加により、CRF mRNA及び転写活性はそれ ぞれ24 hと6 hで有意に増加した。QRFPによるCRF転写活性の増加は、protein kinase A (PKA) 及びprotein kinase C (PKC) 阻害剤の 前投与により抑制された。QRFP添加によりp-CREBが増加し、同作用はPKC阻害剤とカルモジュリンキナーゼ (CaMK) 阻害剤の前投与に よって抑制された。 以上より、視床下部細胞において、QRFPはCRF遺伝子発現を増加させ、HPA系の活性化に関与する可能性が示唆された。QRFPによるCRF遺伝子発現には、PKA及びPKC経路の関与が示唆された。更に、p-CREBの発現増加が、PKC阻害剤とCaMK阻害剤の前投与によって抑制さ れたことから、これらの経路がPKAの上流にあると考えられた。
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