研究課題
ストレスに対する脳・神経系の応答は個体の機能維持のみならずヒトの行動,ひいてはヒトの社会活動にも影響をおよぼす重要な生体システムであり,その破綻は重大な結果をもたらすと考えられる.しかしながらその破綻機構の詳細は未だ解明されておらず,その分子メカニズムの解明はその予防,破綻の解消に繋がると期待される.分子メカニズムの解明のため,研究代表者等によって開発されたストレス応答の中枢である視床下部コルチコトロピン放出因子神経細胞の蛍光可視化マウス(Itoi et al., 2014)を用いて,ストレス負荷にともなって同神経細胞のシナプスの形態や分子局在の再構築機構に迫る研究をおこなった.平成28年度は,前年度に引き続いて1.マウス個体を用いた慢性多様ストレス負荷の実験を行い,2.可視化されたシナプスタンパク質について分布を観察した.さらに,用いている視床下部コルチコトロピン放出因子分泌神経細胞可視化マウス(CRF-Venus)の改良型(CRF-VenusΔNeo)について詳細な解剖学的検討をおこない,視床下部以外の脳の領域においてもCRFがストレス応答について関与している可能性を検討した(Kono et al., 2016 accepted).これらの結果,用いているCRF-Venusマウスの有用性が確認されるとともに,視床下部におけるストレス応答破綻メカニズムの検討が進んだ.CRF-Venusマウスの有用性については国内外の研究者に注目されており,多くの共同研究に発展したことからこの分野の研究が今後一層発展することが期待される.
すべて 2016
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)