研究課題/領域番号 |
15K09425
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 茂和 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (20303547)
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研究分担者 |
松下 明生 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (50402269)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 甲状腺ホルモン / TRH / 甲状腺ホルモン受容体 / 甲状腺刺激ホルモン / GATA2 / 転写 / 視床下部 / 下垂体 |
研究実績の概要 |
甲状腺ホルモン(T3)はその受容体(T3 receptor, TR)に結合して標的遺伝子の転写を活性化(正の調節)または抑制(負の調節)される。このうち正に調節されるのは50%から60%で、TRはT3応答配列(T3-responsive element, TRE)と呼ばれる短いDNA上でレチノイドX受容体(retinoid-X receptor, RXR)とヘテロ2量体を形成し、T3依存性にp160ファミリーを呼び込む。さらにこの複合体はcAMP-response element-binding protein-binding protein (CBP)やp300会合しそれらヒストンアセチル化酵素(Histone acetyl-transferase, HAT)活性によってクロマチン構造を弛緩させ転写を活性化する。一方、残りの40%から50%は負に調節されるが、その分子機構については不明な点が多い。甲状腺刺激ホルモン(TSH)は臨床においても極めて重要でありそのβ鎖(TSHβ)をコードするTSHβの発現は鋭敏な負の調節を受ける。従来、本遺伝子にはGGGTCAという負のTRE(negative TRE, nTRE)が存在するとされて来たが、私達はこの配列は本遺伝子の負の調節には関与しない事を証明し、負の調節の本態はTSHβ発現に必須な転写因子GATA2の機能をT3結合TRβ2が阻害する事であると報告してきた。一方、視床下部傍室核(PVN)で発現する甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyrotropin-releasing hormone、TRH)をコードするprepro-TRH遺伝子もまたT3により負に調節され、それはT3受容体(TR)β2によって媒介される。しかし詳細な機序やTSHβ遺伝子との異同は明ではない。ただ興味深い事にPVNの分化決定因子Sim1を培養神経細胞で強発現するとTRβ2とGATA2の発現が誘導される事が報告されている。今回私達はラットprepro-TRH発現に必要十分なプロモーター領域をCAT遺伝子に融合したレポーター遺伝子(rTRH-CAT)を作成して検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
rTRH-CATを腎由来CV1細胞に発現させたところGATA2は転写を約6倍に上昇した。この活性は-357~-352bpの欠失と変異により消失し同部位がGATA応答配列と考えられた。TRβ2とGATA2を共発現するとT3はプロモーター活性を約30%にまで減衰し、その効果は既報の負のT3応答配列(site4)を破壊しても維持された。摂食の調節シグナルはPVNのメラノコルチン4受容体(MC4R)を介して蛋白リン酸化酵素A(PKA)系を活性化する事が知られる。そこでGATA2共存下で8-bromo-cAMP処理するとprepro-TRHのプロモーター活性は約1.5倍に上昇するもののT3結合TRによる抑制は持続した。甲状腺髄様癌由来のCA-77細胞は内因性にTRHを発現していることが知られている。私達がウエスタンブロットで検討するとこの細胞にはTRβ2は発現していたが、GATA2は検出されず、GATA2の共発現によってプロモーター活性は約2倍に上昇したが、上記のGATA応答配列を破壊するとこのような活性化は消失した。またGATA2による活性化はT3添加により約40%まで抑制された。以上よりT3結合TRβ2はTSHβと同様にGATA2を介してprepro-TRH遺伝子を負に調節している可能性がしさされた。またTRHニューロンへのMC4RシグナルよりもT3による抑制性のシグナルのほうがより優位であることが推定された。
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今後の研究の推進方策 |
現在、抗TRH抗体を用いた免疫染色でratのPVNのTRHニューロンを同定している。またほぼ一致する領域にGATA2の発現を免疫染色で検出してできている。しかし、予想外な事に主なGATA2の発現は細胞質であり、GATA2が核に検出される大脳のニューロン等とは異なっており、PVNにおけるこのような特殊な染色パターンの原因は不明である。いずれはTRHとGATA2の共局在を証明したいと考え、甲状腺摘出により甲状腺機能低下にしたratを用いて検討中である。 今後はratのPVNからTRHニューロンを培養し、(1)GATA2がGATA応答配列に結合するのを阻害する化合物(K-7174)で処理しRT-PCRを用いてprepro-TRH 発現への影響を検討することで、このプロモーターにおけるGATA2の意義をin vivoで確認したい。(2)私達が同定したGATA応答配列(-357~-352bp)に対するプライマーを設定しクロマチン免疫沈降法でin vivoにおけるGATA2のDNA結合を証明したい。(3)8-bromo-cAMPでMC4T/PKA系を刺激してT3の抑制効果との関連を検討したい。(4)培養neuroblastoma細胞であるSH-SY5Yには内因性にGATA2が発現している。そこでこの細胞に私達が作成したrTRH-CAT をステーブルに発現させた上、RNAiでGATA2をノックダウンするなどしてTRHの制御を観察するモデルシステムを構築したい。
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