研究課題/領域番号 |
15K09427
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
花田 礼子 大分大学, 医学部, 教授 (00343707)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経ペプチド / 脳内高次機能 / ストレス反応 / 不安行動 |
研究実績の概要 |
我々は神経ペプチド・ニューロメジンU(NMU)/ニューロメジンS(NMS)システムの新たな生理機能に関して、脳内高次機能に着目して解析を行っている。昨年度までにNMU/NMS両遺伝子欠損マウス(NMU/NMS dKOマウス)を新たに作出し、予備実験として、基本的な全身状態や神経学的異常、反射異常の有無に加え、脳内高次機能に関する一連の行動解析を行った。その結果、NMU/NMS dKOマウスは神経学的異常や反射異常は認めず、コントロールマウスと比較して明らかな体重の増加が認められた。また、行動解析においては、Open Field testならびに恐怖条件付け試験にて「不安やストレス反応」に関連する表現型が認められた。 本年度は、予期せぬ動物飼育施設の感染などによりNMU/NMS dKOマウスの再作出に時間を要した。一方で、昨年度の行動予備実験の表現型に関して再度検証する事ができた。Open Field testでは、NMU/NMS dKOマウス群にて総活動量の低下ならびにストレス時に誘発される常同行動の有意な低下が認められ、恐怖条件付け試験においては、Context ならびにCueに対するFreezingの割合がNMU/NMS dKOマウス群にて有意に増加し、不快な刺激に関しては、文脈記憶(Context)も音等に対する条件付け(Cue)の強さも増していることが判明した。以上より、NMUシステムが「不安・ストレス反応」に関与していることが明らかとなり、今後は、NMUシステムの生理作用について「不安・ストレス反応」に焦点を絞って解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、昨年度作出したNMU/NMS dKOマウスに関し、研究代表者の所属異動に伴うマウス移動に加え、移動先の動物飼育施設のPasteurella pneumotropicaの感染により、マウス処分の上、マウスの再搬入に再度の胚移植を要し、再作出に予期せぬ時間がかかった。現在、ようやく、行動実験に使用するマウスの匹数確保が可能となってきているが、このような理由により、当初計画していた遺伝子改変マウスを用いた実験計画がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、NMUシステムの生理作用について「不安・ストレス反応」に焦点を絞って解析する予定である。具体的には、NMU/NMS dKOマウスを用いて、恐怖条件付け試験や慢性拘束ストレス等を行った際の血中ストレスホルモン動態や自律神経系の変化の解析ならびに脳内ストレス関連標的部位の神経の可塑性やグリア細胞の浸潤度合い、神経伝達物質やその受容体の発現量について解析し、NMUシステムの「不安・ストレス反応」に対する詳細なメカニズムを解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き、本年度は研究代表者の所属異動に伴い、研究室の改装工事や遺伝子改変マウスの匹数の確保に時間を要したため、当初予定していた実験計画を次年度に持ち越すこととなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、実験に使用する遺伝子改変マウスの匹数が確保でき、マウスから採取したサンプルを生化学的に解析する環境も整ったため、次年度は予定していた実験を追加遂行すべく本年度の残額を含め使用する予定である。
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