研究課題
脂肪組織内での11beta hydroxysteroid dehydrogenase 1(11beta HSD1)の発現と活性の亢進がメタボリックシンドロームの病態形成に及ぼす影響は既に確立している。一方、中枢神経系、特に食欲やエネルギー代謝中枢である視床下部での11beta HSD1による細胞内グルココルチコイド(GC)活性化の亢進が、代謝異常の発症に病因論的に重要であるかについては未だ十分に解析されていない。そこで本研究では、視床下部局所におけるGCの細胞内活性化・不活性化が視床下部機能にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目指している。高脂肪食給餌マウスの視床下部各神経核における網羅的遺伝子発現解析のデータに基づき、GCの下流で誘導される遺伝子群の発現亢進が明らかとなった。これまでに、高脂肪食負荷マウスの視床下部神経核における遺伝子発現を定量RT-PCR法により検証され、また視床下部系の培養細胞株を用いたin vitro機能実験を行った。その結果、マウス視床下部にはGC活性化にかかわる11beta HSD1と不活性化にかかわる11beta HSD2の両方の発現が確認され、これらと細胞内酸化還元状態と関連するNADPHにより規定される細胞内GC活性化・不活性化のバランスが視床下部ニューロンの細胞機能調節に関わる可能性が示唆された。さらに、食欲調節に重要であり肥満においてその作用が障害されることが知られるレプチンの作用の減弱と増強に、細胞内GC活性化・不活性化が関与する可能性をレプチン応答性のSHSy5y細胞株を用いて検討した。その結果、この細胞株においてはGCはレプチン感受性を増強すること、11beta HSD2によるGCの不活性化がこのGC作用に拮抗しレプチン感受性を減弱させることが明らかとなった。
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