研究課題
本研究は下垂体機能低下症患者において、我々が新規に同定した抗PIT-1抗体症候群を中心とした解析を自己免疫性下垂体炎の新たな診断・治療方法へ展開する事を目的としている。その第一ステップとして新規自己抗体のスクリーニングと抗原・抗体の解析を進めている。これまで抗PIT-1抗体症候群の解析における大きな問題点として、病態を検討するに足る症例数が不足していたことが挙げられる。この問題を解決するために、申請者らの施設において下垂体機能低下症患者170名の全リストを作成してカテゴライズをおこない、データベースをもとに現在スクリーニング検査を進めている。並行して抗PIT-1抗体症候群の症例の集積も進めている。その過程で一例の男性例の追加と、世界で初めての女性の一症例を見出し、合計5例となった。この症候群はこれまで男性例のみが報告されていたが、この発見により女性例に関する新たな知見が得られる可能性があり現在その解析を進めている。さらに、抗PIT-1抗体症候群患者のほぼ全例に胸腺腫瘍が発症していることを新たに見出した。抗PIT-1抗体症候群の発症のメカニズムとして、以前からPIT-1タンパクに対する免疫寛容の破綻が推測されていたが、その原因は不明であった。申請者らは胸腺腫瘍細胞中にPIT-1タンパクが異所性に発現していることを新たに見出した。この新たな知見は、自己免疫性下垂体炎の原因として「腫瘍随伴症候群」と同様のメカニズムが関連している可能性を示しており、現在その詳細な解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
自己免疫性下垂体疾患の発症メカニズムの解明を目指して解析を行っている1)申請者らが新規に同定した下垂体特異的転写因子PIT-1に対する自己免疫機序の解明を基礎として抗PIT-1抗体症候群の解析本研究期間中に一例の男性例の追加と、世界で初めての女性の一症例を見出した。男性のみにこの症候群が発症すると考えられていたが、この発見により性差に関する新たな知見が得られる可能性があり現在その解析を進めている。さらに、抗PIT-1抗体症候群患者全例に胸腺腫瘍が発症していることを見出した。抗PIT-1抗体の発症のメカニズムとして、以前からPIT-1タンパクに対する免疫寛容の破綻が起こっていることが推測されてていたが、その原因として胸腺腫瘍細胞中に異所性にPIT-1タンパクが発現していることを見出し、現在その詳細な解析を行っている。2)自己免疫性下垂体疾患の原因疾患と考えられているIgG4関連下垂体炎患者のスクリーニング検査を行っている。神戸大学医学部附属病院の消化器内科と連携し、IgG4関連膵炎患者において下垂体機能のスクリーニング検査を進めている。3)上記1)の如く胸腺腫瘍患者が新たなスクリーニング対象となる可能性があり、当院胸部外科との連携を進めている。
予定通り、下垂体cDNAライブラリからの新規抗原タンパクと、その結果に基づいて下垂体機能低下症患者の血中から抽出したCTLについて解析を行う予定である。ELISPOTアッセイによる解析と同様に、下垂体機能低下症患者の血清およびコントロール血清をスクリーニングし、臨床的特徴と対比しながら疾患分類を進めていく。
消耗品の一部に海外からの発送が遅れ今年度中の決済ができなかったため、6061円の繰り越しが生じた。
次年度中に使用する予定である。
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Pituitary
巻: 18 ページ: 722-730
doi: 10.1007/s11102-015-0650-9.
Pediatr Endocrinol Rev.
巻: 12 ページ: 290-296
http://www.med.kobe-u.ac.jp/im2/doctor/activity/acti-04.html