研究課題/領域番号 |
15K09431
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井口 元三 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (60346260)
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研究分担者 |
高橋 裕 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (70301281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自己免疫性下垂体疾患 / 抗PIT-1抗体症候群 / 腫瘍随伴症候群 |
研究実績の概要 |
本研究では下垂体機能低下症患者において、申請者らが新規に同定した抗PIT-1抗体症候群を中心とした発症メカニズムの解析結果を踏まえて、自己免疫性下垂体炎の新たな診断・治療方法へ展開する事を目的としている。現在、新規自己抗体のスクリーニングと抗原・抗体の解析を進めている。 これまで抗PIT-1抗体症候群の解析での大きな問題点として、病態を検討するに足る症例数が不足していることが挙げられる。この問題を解決するために、申請者らの施設において下垂体機能低下症患者170名の全リストを作成して詳細にカテゴライズをおこなった。このデータベースを基に現在スクリーニング検査を行っている。並行して抗PIT-1抗体症候群症例の集積を行っている。その過程で一例の男性症例の追加と、世界で初めての女性症例一例を加えて、合計5症例となった。 抗PIT-1抗体症候群の発症メカニズムに関してはこれまで不明であったが、以前からPIT-1タンパクに対する免疫寛容の破綻が推測されていた。申請者らは患者胸腺腫瘍細胞中にPIT-1タンパクが異所性に発現していることを新たに見出した。症例を詳細に解析したところ患者胸腺摘出術後に抗PIT-1抗体の力価の低下とPIT-1特異的細胞障害性T細胞(CTL)の低下を証明した。(Sci Rep.2017) さらに核内転写因子であるPIT-1が細胞表面にHLAと共に抗原提示をするかに関してこれまで全く不明であったが、実際に提示されることを示し、PIT-1特異的細胞障害性T細胞(CTL)による細胞障害メカニズムの妥当性を証明した。 これらの新たな知見は、自己免疫性下垂体炎の原因として「腫瘍随伴症候群」と同様のメカニズムが関与している可能性を示し、これまでにない全く新しい疾患概念を提唱することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らが新規に同定した下垂体特異的転写因子PIT-1に対する自己免疫機序の解明を基礎として、自己免疫性下垂体炎の発症メカニズムの解析を進めている。 1)抗PIT-1抗体症候群患者の解析に関しては、本研究期間中に一例の男性症例の追加と、世界で初めての女性症例一例を加えて、合計5症例を報告した。男性のみにこの症候群が発症すると考えられていたが、この発見により性差に関しての新たな知見が得られるため現在解析を進めている。申請者らは抗PIT-1抗体症候群患者の全例に胸腺腫瘍を見出し、さらに胸腺腫瘍細胞中にPIT-1タンパクが異所性に発現していることを新たに見出した。症例を詳細に解析し患者胸腺摘出術後に抗PIT-1抗体の力価の低下とPIT-1特異的細胞障害性T細胞(CTL)の低下を証明した。(Sci Rep.2017)これらの新たな知見は、自己免疫性下垂体炎の原因として「腫瘍随伴症候群」と同様のメカニズムが関与している可能性を示し、これまでにない全く新しい疾患概念を提唱することが出来た。 2)自己免疫性下垂体疾患の原因と考えられているIgG4関連下垂体炎患者のスクリーニング検査を行った。神戸大学医学部附属病院の消化器内科と連携してIgG4関連疾患の代表であるIgG4関連自己免疫性膵炎患者において下垂体機能のスクリーニング検査を行い、IgG4関連自己免疫性膵炎症例の5%にIgG4関連下垂体炎が合併していることを報告した。また、IgG4関連下垂体炎は下垂体炎全体の30%を占めており、決してまれではないことが明らかにした。 3)上記1)の如く、胸腺腫瘍患者が新たなスクリーニング対象となる可能性があり、神戸大学医学部附属病院の胸部外科と連携して胸腺腫瘍患者における自己免疫性下垂体炎のスクリーニング検査を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
下垂体cDNAライブラリから新規抗原タンパクをスクリーニングおよび同定し、その結果に基づいたELISPOTアッセイによる解析、すなわち下垂体機能低下症患者の血中から抽出した細胞障害性T細胞(CTL)がその原因となり得るかについての解析を引き続き行う予定である。 研究実績の概要に記載した通り、自己免疫性下垂体炎の病態メカニズムに関与する新規抗原タンパクは胸腺腫瘍に発現している可能性が明らかとなったため、原因となる臓器として胸腺腫瘍に関してもスクリーニングしていく。その他予定通り、下垂体機能低下症患者の血清およびコントロール血清をスクリーニングし、臨床的特徴と対比しながら疾患分類を進めていく。 抗PIT-1抗体症候群の解析での大きな問題点として、病態を検討するに足る症例数が不足していることが挙げられる。この問題を解決するために、神戸大学医学部附属病院の消化器内科および胸部外科と連携して、各科で診療している疾患をスクリーニングし、自己免疫性下垂体炎症例の集積に引き続き努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の一部に海外からの発送が遅れ今年度中の決済ができなかったため、180,983円の繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度中に使用する予定である。
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