研究課題
本研究では下垂体機能低下症患者において、申請者らが新規に同定した抗PIT-1抗体症候群を中心とした発症メカニズムの解析結果を踏まえて、自己免疫性下垂体炎の新たな診断・治療方法へ展開する事を目的としている。新規自己抗体のスクリーニングと抗原・抗体の解析を進めている。これまで抗PIT-1抗体症候群の解析での大きな問題点として、病態を検討するに足る症例数が不足していることが挙げられる。この問題を解決するために、申請者らの施設において下垂体機能低下症患者170名の全リストを作成して詳細にカテゴライズをおこなった。このデータベースを基に現在スクリーニング検査を行い、最近症例が増えつつある免疫チェックポイント阻害薬関連下垂体炎症例の解析を行った。並行して抗PIT-1抗体症候群症例の集積を行っている。その過程で一例の男性症例の追加と、世界で初めての女性症例一例を加えて、合計5症例となった。抗PIT-1抗体症候群の発症メカニズムに関してはこれまで不明であったが、以前からPIT-1タンパクに対する免疫寛容の破綻が推測されていた。申請者らは患者胸腺腫瘍細胞中にPIT-1タンパクが異所性に発現していることを新たに見出した。症例を詳細に解析したところ患者胸腺摘出術後に抗PIT-1抗体の力価の低下とPIT-1特異的細胞障害性T細胞(CTL)の低下を証明した。(Sci Rep.2017)さらに核内転写因子であるPIT-1が細胞表面にHLAと共に抗原提示をするかに関してこれまで全く不明であったが、実際に提示されることを示し、PIT-1特異的細胞障害性T細胞(CTL)による細胞障害メカニズムの妥当性を証明した。これらの新たな知見は、自己免疫性下垂体炎の原因として「腫瘍随伴症候群」と同様のメカニズムが関与している可能性を示し、これまでにない全く新しい疾患概念を提唱することが出来た。
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J Endocr Soc.
巻: 2 ページ: 91-95
10.1210/js.2017-00414
http://www.med.kobe-u.ac.jp/im2/doctor/activity/acti-04.html
http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/research/2017_02_21_01.html