研究課題/領域番号 |
15K09432
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福岡 秀規 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80622068)
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研究分担者 |
高橋 裕 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (70301281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Cushing病 / lncRNA / 浸潤性 / miRNA / non-coding RNA |
研究実績の概要 |
クッシング病の原因であるACTH産生下垂体腺腫(ACTHoma)の術後7検体を用いてマイクロアレイ解析を行った。ここでは本腫瘍浸潤性と関連するKnosp分類を用いKnosp分類0-1群と2-4群の比較検討を行った。Knosp分類0-1群に比べ2-4群で有意に3倍以上の上昇を認めたlncRNAとして4つの候補遺伝子を選出した。次に、さらなる28例のACTHoma術後検体を用いてその4つのlncRNA発現量をリアルタイムPCR法で検討したところ、colorectal neoplasm differentially expressed(CRNDE)が有意に発現上昇を認めることが明らかとなった(p = 0.013)。また、CRNDE発現はマクロ腺腫においてミクロ腺腫より発現が高い傾向を認めた(p = 0.050)。次にCRNDEには幾つかのスプライスバリアントアイソフォームが報告されており、そのアイソフォーム発現パターンを解析したところ、ACTHomaではエクソン3を欠くスプライスバリアント2の発現が高いことが明らかとなった。次にCRNDEの細胞内局在を、核内RNA、細胞質RNAを分離してRealtime PCR法を用いて定量することにより検討した。まずヒト腎癌細胞株HEK293T細胞を用いて検討したところ、CRNDEは主に細胞質に局在していた。さらにACTHoma術後検体を用いて解析したところ同じように細胞質に主なCRNDEの局在を認めた。 意義;ACTHomaの浸潤性、増殖性に関連するlncRNAとしてCRNDEを同定した。浸潤性ACTHomaは手術の寛解率も低く、予後不良である、しかしその浸潤性に関連する因子は明らかでない。今回明らかとなったCRNDEがどのように浸潤性と関連するのか、現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クッシング病検体を用いた研究が多いが、希少疾患であり検体数が限られるため多くの実験を行うための十分な検体がなかなか得られない事が理由として挙げられる。モデル細胞株を用いた実験で代用することを模索しているが、lncRNAは種差や組織での違いが大きく、ACTHomaの人由来モデル細胞が確立していないことが実験における幅を狭めており、それを克服するためのモデル実験系を同時に確立する実験を行っているため進捗がやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在実験モデル系の確立のため、術後検体を用いた三次元細胞培養実験系を作成している。本実験系が確立すれば多くの実験を前に勧めることができる。そのための遺伝子導入系もすでに作成しており、今後の発展が期待される。 また、ヒト由来ACTH産生細胞としてDMS-79細胞を購入した。本細胞は異所性ACTH産生細胞を呈する非小細胞肺癌由来細胞株であるが、ACTH産生神経内分泌腫瘍としての性質がACTHomaと共通しており一つの実験系として使える可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は遺伝子導入用コンストラクトの作成を中心に行っていたこともあり、予定よりも使用額を抑えることができ、次年度にRNAseqなどの高額な実験が控えていることもあり繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はRNAseqを用いた実験によりCRNDEに結合するmiRNAを網羅的に解析することを計画している。
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