研究課題/領域番号 |
15K09434
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大塚 文男 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40362967)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 卵巣 / 生殖内分泌 / BMP / 視床下部 / 下垂体 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究テーマとして、卵とBMP分子群により形成される卵胞細胞間コミュニケーション機構の探求を行った。卵胞BMPシステムは、FSHの刺激下で卵母細胞を中心に、卵胞細胞間をBMP networkとして取り巻き、卵胞の正常な発育・ステロイド合成を調節する細胞間コミュニケーターとして機能する。顆粒膜細胞→卵、卵→顆粒膜細胞の両者に着目して本研究を進めた。我々が卵母細胞から同定したEstrogen誘導因子:Prohibitin-2(PHB2)に着目し、ステロイド合成・卵胞機能への影響を検討した。PHB1,2はアポトーシス・細胞周期などに関与するミトコンドリア蛋白であるが、PHB2の卵胞における役割は不明であった。卵母細胞因子との連関にも着目し、PHB2の卵胞ステロイド合成に与える影響をラット顆粒膜細胞・卵母細胞の初代培養系で検討した。PHB2 mRNAは卵母細胞優位に発現し、PHB2 をknockdownするとProgesterone産生が増加することから、内因性PHB2はProgesteroneの産生を制御すると考えられた。BMP-15・GDF-9は卵胞におけるPHB2 mRNAの発現レベルを減弱し、BMP-15・GDF-9による顆粒膜細胞のSmad1/5/8およびSmad2/3のリン酸化は、Estrogenの存在下で減弱した。Estrogenは、卵母細胞の存在下で顆粒膜細胞のProgesterone合成を抑制するが、この機序にEstrogenにより誘導される卵母細胞のPHB2を介するProgesterone産生の抑制機序が示唆された。本研究期間における検討により、卵母細胞に発現する成長因子とPHB2およびプロゲステロン制御系の間に新たな機能連関の存在が示唆され、これが卵胞におけるエストロゲン・プロゲステロンの産生バランスに寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は初代培養系における実験結果が安定しなかったため、反復実験のため予定より若干研究の進捗は遅れていたが、徐々に安定した結果が集積してきたため、次年度には遅れを取り戻せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究では、全身の組織で多彩な機能をもつBMPを診断と治療への機能的因子として臨床の場へ応用し、生殖内分泌の病態解析ツールや創薬への応用として進化すべく新たな研究を展開したいと考えている。前年度の予定に関しても遅れを取り戻すために以下の研究についても併行して遂行する。顆粒膜細胞において、PI3K下流でBMP-15発現の抑制などの卵胞成長抑制的に作動するForkhead転写因子Foxo3aの研究、転写因子Foxl2(Forkhead box L2)の機能に関する研究、顆粒膜細胞のFSHR調節系としてGPCR kinase(GRK)/Arrestin による脱感作系に関する検討も併せて進行したい。そして、次年度の予定である視床下部-下垂体-卵巣を含むH-P-0系におけるBMP作動系の探索して、BMPの分泌機序の検討や、循環血中BMPとして注目される新しいBMP-9の卵胞機能・成長における研究、さらにGnRH調節因子・概日リズム因子と卵巣BMPの関連を探索したい。組織特異的活性をもつBMPがH-P-O系へ及ぼす影響とその時相を把握し臨床展開から、内分泌モデュレーターとして機能するBMP作動性の解明に迫りたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
冷凍庫などの設備費の予定であったが、反復実験のため試薬への使用が主体となったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度より、予定の設備および消耗品への研究費の活用を予定しており、計画通りの使用ができると考えている。
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