研究課題
平成28年度は、研究テーマとして、平成27年度の卵とBMP分子群により形成される卵胞細胞間コミュニケーション機構の探求とともに、視床下部-下垂体-卵巣を含むHPO 系におけるBMP 作動系について研究を進めた。排卵やホルモン変動のリズム形成に寄与するMelatonin・Orexin作動系、そして循環BMPであるBMP-9について卵巣局所因子やステロイド合成系との機能的なリンクに着眼して研究を進めた。Orexinは睡眠覚醒パターンや摂食行動・自律神経系の調節など機能は多岐に及ぶ分子であるが、内分泌組織においても下垂体や副腎・性腺などに受容体発現が確認されており、視床下部-下垂体-副腎系や視床下部-下垂体-性腺系の調節に影響を与える可能性がある。下垂体前葉モデルとしてOrexin1受容体を認めるlactotrope GH3細胞を用いたところ、OrexinはForskolinの刺激下でPRL mRNAレベルを抑制し、BMP受容体シグナルを減弱することが明らかとなり、OrexinがBMP抑制的に作用することが示された。一方、卵巣においては、Orexinが顆粒膜細胞のBMPシグナルを減弱して、プロゲステロン合成系を促進することが明らかとなった。また、循環BMP-9は卵巣のBMP受容体を介してFSHによって誘導されるプロゲステロン産生を抑制する分子であるが、全身内分泌系への影響として、副腎においてもBMP受容体を介してcAMP-PKA経路を抑制することで副腎皮質ステロイド産生系を制御する可能性が示唆された。これらを踏まえて、コンベンショナルな卵巣機能調節及びステロイド産生系モデュレーターとしての発展性を期待し、BMP 分子を診断ツールとして臨床へ応用するとともに、視床下部-下垂体を含めた全身的BMPのbioavailabilityと内分泌活性・生理的意義をさらに探索していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は初代培養系における実験結果が安定しなかったため、反復実験のため予定より若干研究の進捗は遅れていたが、徐々に安定した結果が集積し、平成28年度はある程度予定通りに研究が進んだ。
平成28年度以降の研究として、全身の組織で多彩な機能をもつBMPを診断と治療への機能的因子として臨床の場へ応用し、生殖内分泌の病態解析ツールや創薬への応用として進化すべく研究を展開したいと考えている。視床下部-下垂体-卵巣を含むH-P-0系におけるBMP作動系の探索して、BMPの分泌機序の検討や、循環血中BMPとして注目される新しいBMP-9の卵胞機能・成長における研究を進めながら、OrexinやMelatoninを含む種々の概日リズム因子と卵巣BMPの関連も探索したい。組織特異的活性をもつBMPがH-P-O系へ及ぼす影響とその時相を把握し臨床展開から、内分泌モデュレーターとして機能するBMP作動性の解明に迫りたいと考えている。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 12件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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