研究課題
①抗RANKL抗体による胸腺髄質細胞除去マウス作製とTSHRによる免疫:最近Khan ISらによって報告された胸腺髄質細胞除去方法(J Exp Med.211:761,2014)を取り入れて、胸腺髄質細胞の中枢性免疫寛容における役割を検討した。(1) 抗RANKL抗体をBio X Cell社より購入した。50ug、100 ug、200 ugと量を変えて、TSHR免疫感受性マウスであるBALB/cマウスの腹腔内に週3回、2週間にわたって投与した。(2) マウスから胸腺を摘出して、酵素処理により、胸腺細胞を分離した。分離細胞を各種細胞表面抗原に対する抗体を用いて染色し、flow cytometerを用いて、CD45-/EpCAM+/MHC II+/Ly51+胸腺皮質細胞とCD45-/EpCAM+/MHC II+/Ly51-胸腺髄質細胞を同定し、全胸腺細胞、胸腺皮質細胞、胸腺髄質細胞の数を測定した。その結果、抗RANKL抗体は容量依存性に主に胸腺髄質細胞をdepleteし、200 ugでほぼ90%のdepletionが得られた。(3) 既報に従い、無処置マウス及び胸腺細胞除去マウスをマウスTSHR発現アデノウイルスで3週間隔で2回免疫した。2回目免疫2週後に、採血して血清を得、抗TSHR抗体・甲状腺ホルモンをそれぞれFlow cytometry とELISAで測定した。その結果、無処置マウスでは後マウスTSHR免疫反応が認められなかったのに対し、胸腺細胞除去マウスでは、抗マウスTSHR抗体の明らかな産生が認められた。しかし、過去のTSHR KOマウスをマウスTSHR発現アデノウイルスで免疫した際の抗体価の上昇に比較すると、かなり低く、恐らくそのため甲状腺ホルモンの上昇には至らなかった。
2: おおむね順調に進展している
1年目に計画していた研究は、ほぼ順調に消化された。しかし、得られた結果は、仮説に反して、中枢性免疫寛容の重要性を強く示すものではなかった。よって、計画通りであるが、28年度は方法を変え、胸腺細胞での情報伝達系に関与するZAP-70に種々の程度の変異を持つマウスを用いて、胸腺を介した中枢性免疫寛容の抗TSHR自己免疫反応における役割をさらに詳細に明らかにしたい。
上記の【現在までの進捗状況】に書いたように、27年度は仮説を強く支持するデータは得られなかったが、実験内容は計画通り進んだ。28年度も当初の計画通り、ZAP-70変異マウスを用いた研究へ進む予定である。
実験が順調に進み、予定したより、少数のマウス数で充分な結果が得られたため。
28年のマウス購入・飼育費用として用いる予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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