研究課題
胸腺細胞における自己抗原刺激の異なるマウスの作出と免疫反応の検討H27年度での胸腺除去によるTSHRに対する中枢性免疫寛容破たんの実験で、甲状腺ホルモン上昇には至らなかったものの、抗TSHR抗体価の上昇がみられたことから、胸腺におけるTSHRの発現量の変化がTSHR免疫への感受性(すなわちバセドウ病発症の感受性)を変えるという仮説が証明されたことになる。そこでH28年度は、さらにこの点を確認するため、胸腺細胞での情報伝達系に関与するZAP-70に変異を持つマウスを用いた。ZAP-70はMHC class IIと結合した自己抗原に刺激されたT細胞受容体の細胞内領域に結合して細胞内情報伝達、つまりT細胞の刺激ひいてはnegative selectionに関与する因子で、これに点突然変異を持つSKGマウスはZAP-70の機能低下のため自己反応性T細胞が除去されず、関節リウマチを自然発症する(Nature. 426: 454, 2003)。また、ZAP-70 KOホモマウスはT細胞受容体刺激後の細胞内情報伝達が欠如し免疫不全を呈する。野生型とSKGマウスとZAP-70 KOマウスを交配して、ZAP-70wt/wt、ZAP-70wt/skg、ZAP-70wt/-、ZAP-70skg/skg、ZAP-70skg/-、ZAP-70-/-とZAP-70の発現量/細胞内シグナル強度が異なる種々のマウスを作出した。H29年度はこれらのマウスの抗TSHR自己免疫反応を比較検討する。
2: おおむね順調に進展している
マウスの交配に時間がかかったが、予定通り6種類のマウスを作出することができた。マウスのジェノタイプなどにも技術的な問題は発生しなかった。
H29年度は、既報に従い、ヒト或いはマウスTSHR A-サブユニット発現アデノウイルスで3週間隔で2回免疫し、2回目免疫の2週後に採血して、抗TSHR抗体をFlow cytometryとTSAbアッセイ法で、甲状腺ホルモンをRIAで測定する。胸腺を摘出して、RNAを抽出し、RT-PCRでZAP-70及びTSHRの発現量を測定する。脾細胞を分離して、TSHR特異的サイトカイン分泌を比較検討する。
H28年度は、マウスの交配が中心であったため。
平成29年度の実験消耗品費用として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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