研究実績の概要 |
本研究では、終末糖化産物受容体(Advanced Glycation End-products (RAGE))が生理的役割としてHPA axisに関与するという仮説を、in vitro, in vivoモデル系を用いてその機序を含めてRAGEの意義を解析する。 In vivo実験では、12週齢の♂マウスで実験を行った。野生型マウスと比較して副腎重量(体重補正)は、野生型マウスと比較してRAGE欠失マウスは、有意に大きく(WT: 0.19±0.01 (mg Adrenal/g BW), KO: 0.26±0.02 (mg Adrenal/g BW), P<0.01)、組織像では副腎皮質細胞の腫大が認められた。また、副腎RNAを用いたReal time-PCRでは、ステロイドホルモン合成にかかわるStAR, CYP11A1, HSD3B1, POR, CYP11B1では有意差を認めなかった。免疫染色で副腎皮質にRAGE発現を認めた。24時間蓄尿中コルチコステロン(CS)量(WT: 217.5±19.5 (ng/day), KO: 114.2±12.3 (ng/day), P<0.01)、およびLipopolysaccharide (LPS)負荷試験での血清CS濃度は、野生型マウスと比較して、RAGE欠失マウスは有意に低値であった。Y-1 cellを用いたin vitroモデル系では、アデノウイルスを用いてLac-Z/RAGEの強制発現を行った後に、LPS 10 ng/mLを添加した。RAGE過剰発現副腎皮質Y-1 cellにおいて、経時的にメディウム上清中のCS濃度は、Lac-Z群と比較して、LPS刺激前は差を認めなかったが、10時間後に有意な増加(Ad-LacZ: 2.8±0.35 (ng/mL), Ad-RAGE: 3.7±0.13 (ng/mL), P=0.02)を認めた。LPSによるRAGEを介したCS産生・分泌にかかわるシグナル伝達系を解明する目的でERK阻害剤(U-0126)・NFkB阻害剤(CAPE)・抗酸化剤(NAC)を使用したところ、ERK阻害剤(U-0126)は容量依存性にRAGEによるCS産生・分泌増加の低下を認めたが、NFkB阻害剤(CAPE)・抗酸化剤(NAC)ではRAGEによるCS産生・分泌増加の低減を認めなかった。このことから、LPSによるRAGEを介したCS産生・分泌増加にはERKシグナルが関与しているものと考えられた。
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