研究課題/領域番号 |
15K09445
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
森 健二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00416223)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生理活性ペプチド / 神経ペプチド / Gタンパク質共役型受容体 |
研究実績の概要 |
生理活性ペプチドは、細胞間の情報伝達を担う主要な分子であり、生体機能の調節において広範かつ重要な役割を果たしている。故に、新規生理活性ペプチドの発見とそれに続く機能解析により、新しい生体調節機構を明らかにすることができる。 研究代表者の所属する研究室では、生理活性ペプチドの活性を検出するアッセイ法を新たに開発・導入することによって、数多くの新規生理活性ペプチドを継続的に発見してきた。具体的には、1980年代前半の平滑筋の弛緩・収縮アッセイの開発により3種類のナトリウム利尿ペプチドと6種類のニューロメジンを、1990年代のcAMPのラジオイムノアッセイの導入によりアドレノメデュリンを、近年ではオーファンGタンパク質共役型受容体(GPCR)の内因性リガンド探索によりグレリンとニューロメジンSを発見してきた。これらの事実から、新しい活性測定法の導入が新規生理活性ペプチド発見の契機となっていることがわかる。 これまで、オーファンGPCRの内因性リガンド探索により十数種類の新規生理活性ペプチドが同定されているが、現在でも内因性リガンドがペプチドであると推測されるオーファンGPCRが数十種類存在する。しかしながら、それらを利用した新たな生理活性ペプチドの発見は、研究代表者によるニューロメジンSの発見以来、長らく途絶えている。これは、これまでの探索に用いてきたGPCR活性化測定法(細胞内カルシウムイオン濃度もしくはcAMP濃度の変動測定)ではリガンドが同定できないことを暗示している。そこで、現存するオーファンGPCRの内因性リガンドを探索するために、3つの新たなリガンド活性測定法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーファンGPCRの内因性リガンドとして新規生理活性ペプチドを探索するには、いかに新規ペプチド由来のリガンド活性を見出すかが肝要である。そこで、従来の探索法の死角を克服できる新たな探索法として三量体Gタンパク質G12/13シグナル伝達系の活性化を指標とした探索と、高感度なGPCR活性化測定法(CellKeyシステム)を駆使した探索、新規概念を導入したリガンド探索を実施する。G12/13シグナル活性化の検出にはこれまで煩雑な作業が必要だったが、SRF-REレポーター遺伝子を活用したハイスループット活性測定法を新たに構築した。また、目的のリガンドの組織含有量が極めて少ない場合を想定して、従来のGPCR活性化測定法よりも10倍以上高感度なCellKeyシステム(モレキュラーデバイス社)を導入し、リガンド既知のGPCRをモデルとして本法が組織抽出物からの内因性リガンド探索に適することを証明した。本アッセイ法は、共役する三量体Gタンパク質の種類を問わずGPCRの活性化を検出できるため、特に共役する三量体Gタンパク質の種類が不明な全てのオーファンGPCRの内因性リガンド探索に適応できる。一方、Gqシグナル伝達系の活性化を検出するために、これまでは細胞内カルシウムイオン濃度の変動を測定していたが、今回新たに、セカンドメッセンジャーであるイノシトール3リン酸の代謝産物であるイノシトール1リン酸の産生量を定量できるアッセイ系を導入した。これにより、複数のオーファンGPCRが基礎活性を有することが明らかになり、このようなオーファンGPCRでは内因性リガンドがインバースアゴニストとして機能する可能性も考慮して探索を実施しなくてはならないことを示した。
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今後の研究の推進方策 |
ラットもしくはブタの各種組織より抽出したペプチド画分や様々な培養細胞の培養上清を出発材料としてオーファンGPCRの内因性リガンドとなる新規生理活性ペプチドを探索する。特異的なリガンド活性が検出できた際には、それを精製の後、構造を決定する。新規ペプチドを得た場合には、cDNAクローニングにて前駆体タンパク質の構造を決定するとともに、遺伝子発現分布などを解析する。一方、これまでに研究代表者は、新たな生理活性ペプチドを同定している。このペプチドの受容体は未だに不明なため、オーファンGPCRのリガンドとして機能するかを検討する。また、このペプチドについても機能解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用する予定の研究費は、主に物品費と謝金として計画していたが使用しなかったものである。特に、物品費については必要最小限の消耗品の購入に充てたため、次年度使用額が生じた。翌年度は物品費として使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究計画では、国立循環器病研究センターの保有する共同研究機器ならびに、国立循環器病研究センター研究所生化学部の機器を中心に使用するため、研究を遂行するための物品費(消耗品)を中心として研究費の使用を計画している。また、最新の知識・情報を収集するための調査・研究旅費、ならびに成果発表に関する必要経費の使用も計画している。
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