研究課題
生理活性ペプチドは、細胞間の情報伝達を担う主要な分子であり、生体機能の調節において広範かつ重要な役割を果たしている。そこで、新規生理活性ペプチドの発見とそれに続く機能解析による新しい生体調節機構の解明を目的とする。本研究では、生理活性ペプチドの新しい活性測定法を導入して新規生理活性ペプチドを探索する。現在でも内因性リガンドがペプチドであると推測されるオーファンGPCRが数十種類存在しており、これまでの探索に用いてきたGPCR活性化測定法(細胞内カルシウムイオン濃度もしくはcAMP濃度の変動測定)ではリガンドを同定することができていない。そこで、3つの新たな活性測定法を導入した。特に、Gqシグナル伝達系の活性化を検出するために、セカンドメッセンジャーであるイノシトール3リン酸の代謝産物であるイノシトール1リン酸の産生量を定量できるアッセイ系を導入した。これにより、複数のオーファンGPCRが顕著な基礎活性を有することが初めて明らかになり、このようなオーファンGPCRでは内因性リガンドがインバースアゴニストとして機能する可能性も考慮しなくてはならないことを新たに示した。一方、これまでの研究にて神経ペプチドであるneuromedin Uの前駆体タンパク質から新規ペプチドneuromedin U precursor-related peptide(NURP)が産生されることを免疫学的に示していたが、その実体は不明であった。そこで、ラット脳からNURPを精製することにより33および36アミノ酸残基からなる2種類の分子型で存在することを示した。このNURPは脳内ドーパミン系を介したプロラクチン分泌促進活性を有するが、この他にも脳室内投与実験により自発運動量やエネルギー消費、心拍数が増加することなどを示した。現在、今回導入した活性測定法も活用してNURPの受容体を探索している。
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