研究課題
これまでの検討で、フェリチンH鎖(FTH)蛋白によりHepG2細胞でHAMP上昇が起こることを示唆する結果を得ていたが、精製蛋白での検討も必要と判断し、大腸菌での産生・精製を開始した。pET-22(+)vectorを基本骨格とし、FTL(His-tag付)を組み込んだFTL-TAC3、また、FTH(His-tag付)を組み込んだFTH-TAC2を完成させ各々塩基配列を確認した。これらのvectorにて大腸菌KRXを形質転換し蛋白産生・精製を行った。培養した大腸菌液を遠心分離し、溶解・遠心し、Hisカラムを使い精製した。その後PBSにて透析を行い、western blotで確認した。この方法で大腸菌での安定した産生・精製方法が確立できた。精製したFTLおよびFTHをHepG2およびHep3B細胞培養上清に加え、24時間培養後RNAを抽出し、HAMP発現をreal-time PCR解析した。しかし、同様の実験を複数回行ったが、当初認められたHepG2細胞におけるFTHでのHAMP発現亢進作用は精製蛋白では有意差をもって安定して検出できていない。培養のスケールを変えたり、FBS free条件下など、設定を変えた検討も重ねたが、むしろHAMP発現が有意に低下する結果も得られ、実験間で乖離が認められた。フェリチンはHAMPを変動させるが、生体内の状況に応じてfineな調整が行われている可能性を示唆すると考えている。各実験間の結果の乖離は、①FBS freeではFTHやFTLなど精製蛋白が細胞に対して障害性を示す可能性、②最終的に培養上清に加わる鉄量(フェリチン内に入る鉄量)や③フェリチンのheteropolymerの形成度合いなどが影響する可能性などを考えている。今後これらの影響を個別に解析する手技を検討し、本課題研究で得られた成果を基礎とし引き続き研究を進展させる予定である。
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International Journal of Hematology
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