研究課題/領域番号 |
15K09447
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤原 亨 東北大学, 大学病院, 講師 (60333796)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 赤血球分化 / 貧血 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
赤芽球分化に関わる転写因子群の機能解析に焦点をおき、テトラサイクリン発現誘導系を用いてマウス赤血球特異的にshRNAを効果的かつ可逆的に発現させる、in vivo遺伝子ノックダウン解析系を確立することを目的とする。本研究においては、in vivo遺伝子ノックダウン解析系のモデルとしてLMO2に着目し、この解析系を用い、LMO2の赤血球系疾患の関わり、及びin vivo赤芽球におけるLMO2を介した遺伝子発現制御機構の一端を明らかにすることを目的とする。 具体的には、赤血球系の転写因子であるGATA-1プロモーター制御下にリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)を発現させるトランスジェニックマウス(Tg-G1HRD-rtTAマウス)と、テトラサイクリン応答因子(TRE)制御下にLmo2特異的shRNAを発現させるトランスジェニックマウス(Tg-EGFP-Lmo2 shRNAマウス)を作成し、両者を掛け合わせることにより目的のマウスを作成する。 平成28年度までに、Tg-G1HRD-rtTAのPCR陽性マウスを樹立した。本マウスにおいては、rtTAが赤芽球・巨核球・精巣などGATA-1発現細胞特異的に発現しているかどうか、テトラサイクリン投与後のマウスを用いたウエスタンブロット法により確認中である。また適正なテトラサイクリン投与量および期間について現在検討している。 一方、Tg-EGFP-Lmo2 shRNAマウスについては、マウスLmo2遺伝子を効率的にノックダウンするためのshRNA標的配列を細胞株での検討で同定し、それを含むDNA断片(TRE-EGFP-Lmo2 shRNA)を野生型マウスの前核期受精卵にマイクロインジェクションにて導入後、陽性マウスをPCRにて確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
赤血球系の転写因子であるGATA-1プロモーター制御下にリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)を発現させるトランスジェニックマウス(Tg-G1HRD-rtTAマウス)と、テトラサイクリン応答因子(TRE)制御下にLmo2特異的shRNAを発現させるトランスジェニックマウス(Tg-EGFP-Lmo2 shRNAマウス)の陽性マウス獲得までは進んでいる。しかしながら当初の予想と反して、Tg-G1HRD-rtTAマウスにおいては、rtTAを赤芽球・巨核球・精巣などGATA-1発現細胞特異的に発現しているマウスを樹立する点で予定より多くの時間を必要としている。適切なクローンを確認後、テトラサイクリン投与後のマウスを用いたウエスタンブロット法により確認する予定である。一方、Tg-EGFP-Lmo2 shRNAマウスについてはTER、EFGP、Lmo2 shRNAを1つのDNA断片につなげる点に当初の予定より多くの時間を必要とした。最終的にTRE-EGFP-Lmo2 shRNAのDNA断片を作製し、野生型マウスの前核期受精卵にマイクロインジェクションにて導入後、PCRにて陽性マウスをスクリーニングするところまで至っている。今後、両者のマウスを掛け合わせることにより目的のマウス(Tg-G1HRD-rtTA;Tg-EGFP-Lmo2 shRNAマウス)を作製して解析を行う予定である。以上より、概ね順調に進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、Tg-G1HRD-rtTAマウスとTg-EGFP-Lmo2 shRNAマウスを交配することにより、まず目的のマウス(Tg-G1HRD-rtTA;Tg-EGFP-Lmo2 shRNAマウス)を作製する。その後に、作製したマウスにおいて、テトラサイクリン依存性に対象細胞におけるLmo2の発現低下が認められるか、定量RT-PCR法及びウエスタンブロット法により検証する。 目的のマウスを樹立後、次の点を解析することを予定している。1)LMO2ノックダウンマウスにおける末梢血及び骨髄の評価:LMO2ノックダウン前後のマウスの末梢血採取を動物用自動血球計測装置にて比較測定する。もしLMO2ノックダウンにて貧血が認められた場合、赤血球の形態およびミトコンドリアにおける鉄沈着の有無などサイトスピン標本・電子顕微鏡にて評価する。2)LMO2ノックダウンによる遺伝子発現プロファイル解析:LMO2ノックダウン前後のマウス脛骨及び腓骨の骨髄細胞から、赤芽球系細胞マーカーであるTer119陽性細胞を分離し、マイクロアレイ解析に供する。3)LMO2制御下遺伝子群の発現制御機構の解析:上述のマイクロアレイ解析で発現変動を認めた遺伝子におけるヒストン修飾の変化をクロマチン免疫沈降法にて検討する。さらに、蛋白質複合体解析を通じて、エピゲノム変化を引き起こした修飾酵素、脱修飾酵素、修飾基結合因子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は本研究における最終年度であり、成果発表の出張旅費を次年度当初予算より多めに見積もる必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表のための出張旅費として平成29年度請求額と合わせて使用する予定である。
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