研究課題/領域番号 |
15K09449
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
尾崎 司 山形大学, 医学部, 助教 (60380565)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラスミノゲン欠乏症 / FDP / 質量分析 / モノクロ-ナル抗体 / プロテアーゼ / ELISA |
研究実績の概要 |
1. FDP切断部位の解析 平成27年度に引き続き、FDPに対する特異モノクローナル抗体2種類を用いてPLG欠乏症および健常人のFDPの解析を行った。タンパク質分解酵素による切断部位 (P1) は不均一であったが、同P2’、 P3’が比較的均一になっていたことから、最初にプロテアーゼで切断を受けた後、カルボキシペプチダーゼによる切断を受けた可能性が考えられた。そこでP1に加え、P2’での切断に関与したプロテアーゼを基質特異性から推定した。PLG欠乏症FDPではP1がArgでP2、P1’が不均一であった。血漿中にはP1がArgとなるプロテアーゼは多数存在し、候補の特定は出来なかった。P2’での切断に関与するプロテアーゼとしてはカテプシンDや顆粒球エラスターゼなどが候補に挙げられた。このうち、カテプシンDは通常の代謝系に関与しているので除外した。 2. 顆粒球エラスターゼのELISA 顆粒球エラスターゼについてELISA法を用いて血漿濃度を測定したところ、顆粒球エラスターゼはPLG欠乏症3例で25.5±9.5 ng/mL、健常人6例で25.5±12.2 ng/mLと有意差はなかった。 3. 血漿プロテオーム解析 選定を進めるために、PLG欠乏症3例と健常人6例の血漿プロテオーム解析を実施した。同定した264種類の血漿タンパク質のうち、3種類以上のペプチドで定量比較ができた68種類のタンパク質について比較を行った。PLG欠乏症で有意に増加していたタンパク質はフィブリノーゲンや補体タンパク質C4など12種類あった。一方、減少していたタンパク質はプラスミノーゲンやトランスサイレチンなど9種類あった。候補プロテアーゼの同定には至らなかったが、PLG欠乏症では健常人に比べてある特定の急性期タンパク質が増加していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FDP切断部位の解析は当初の計画通り切断部位 (P1) の解析を行い、さらにP2'での切断も考慮に入れることで、候補プロテアーゼに顆粒球エラスターゼが挙げられた。P1での切断に関与するプロテアーゼについても今後候補を絞っていく予定である。 また、当初の計画通り候補プロテアーゼである顆粒球エラスターゼのELISAを実施した。候補プロテアーゼである顆粒球エラスターゼがPLG欠乏症と健常人で有意差がなかったことから他のプロテアーゼ候補を探索する目的で当初の計画にはなかったが、血漿プロテオーム解析を実施した。候補プロテアーゼの選定には至っていないが、PLG欠乏症では健常人に比べてある特定の急性期タンパク質が増加していることを見出した。PLG欠乏症での代替的線溶経路に関与するプロテアーゼの同定には至っていないが、新たな知見もあり、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
PLG欠乏症例が血栓症を発症しない理由を解明するために多角的な視点で解析する。 1. 候補プロテアーゼの選定; 当初の計画ではFDPから候補プロテアーゼを選定する予定だったが、特定できなかったので血漿プロテオーム解析を実施する。28年度に実施した血漿プロテオーム解析ではプロテアーゼは主要因子のみの解析しかできていなかったので、微量なプロテアーゼも比較対象として代替的線溶経路に関与するプロテアーゼについて引き続き探索する。また、様々な活性化物質によって線溶活性が発現しないかフィブリンザイモグラフィーによって確認し、活性化物質から候補プロテアーゼの選定を行う。 2. 候補プロテアーゼのキャラクタリゼーション; 候補プロテアーゼが選定できた場合は、当初の予定通り、ELISA、あるいはWestern Blotによりタンパク質量をPLG欠乏症と健常人で比較する。さらに特異基質を用いて活性比較を行う。 3. 凝固活性や補体活性化能の測定; 当初の計画にはなかったが、血漿プロテオーム解析で複数の補体タンパク質が増加していることを見出したので、PLG欠乏症と健常人で凝固活性や補体活性化能に差がないか調べ、PLG欠乏症で血栓症を発症しない理由を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注していた製品の製造、出荷遅延のため年度内に届かなかったので次年度に持ち越しになった。
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次年度使用額の使用計画 |
発注した製品は既に届いており、既に使用した。
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