研究実績の概要 |
1.候補プロテアーゼの選定: 平成28年度に引き続き、FDPの切断部位を詳細に解析したところ、一部がMMP-3、MMP-14の基質特異性と一致することを見出した。これらのプロテアーゼは血中にも存在することから、顆粒球エラスタ-ゼ、カテプシンGに加え、MMP-3、MMP-14も候補プロテアーゼとして検討を行った。PLG欠乏症血漿を凝固させ、様々な候補プロテアーゼで分解の検討を行った。健常人血漿を用いた場合は生理条件のtPA (5 ng/mL) を加えると8時間で凝固塊は完全に溶解した。一方、PLG欠乏症血漿ではいずれのプロテアーゼ(基準値の10倍量)を用いた場合も72時間でも凝固塊は完全には溶解しなかった。PLG欠乏症血漿でもPLGは10%未満だが存在しており、tPAを加えると72時間で健常人血漿の約10%のFDPを産生した。一方、顆粒球エラスタ-ゼ、カテプシンG、MMP-3、MMP-14単独では5%未満、tPAと組み合わせても10%程度と相乗効果は認められなかった。0.5 mL/minで循環させながら同様の実験を行ったところ、健常人血漿では2時間で凝固塊は完全に溶解したが、PLG欠乏症血漿ではtPA, 候補プロテアーゼともに存在しても24時間では完全には溶解しなかった。 2.凝固活性や補体活性化能の測定:APTT試薬を用いて凝固系を活性化し、Xa因子の合成基質を用いて凝固活性を測定したところ、健常血漿と比べて95%と有意差は認められなかった。一方、フィブリン上に形成されるC5b-C9複合体(膜侵襲複合体)を測定したところ、PLG欠乏血漿のフィブリン上には膜侵襲複合体が形成され、PLGの量依存的に阻害されることを見出した。この結果からフィブリン上で補体系が活性化され、オプソニン化されたフィブリンは大食細胞の貪食によって除去される可能性が考えられた。
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