研究課題/領域番号 |
15K09450
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田岡 和城 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30529178)
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研究分担者 |
荒井 俊也 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00579716)
吉見 昭秀 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80609016) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多能性幹細胞 / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒトの血液由来人工多能性幹細胞induced pluripotent stem cells(iPS細胞)を用いて、骨髄移植に使用できる造血幹細胞を樹立誘導することである。白血病をはじめとする造血器腫瘍の根治治療として造血幹細胞治療がある。これまでは、骨髄バンクや臍帯血によって、ドナーを得ていたが、適切なドナーがいない場合や、コーディネートに時間がかかること、臍帯血は十分な細胞数が確保出来ないといった問題があり、十分な治療が出来なかった。申請者は、HLA一致のヒトの血液から速やかにiPS細胞を樹立し、さらに造血幹細胞に誘導することによってドナーソースとしてのiPS細胞由来造血幹細胞を作成することをめざす。この新たなドナーソースの作成は、骨髄バンクを基盤としたこれまでの移植医療を変革する可能性があると考えられる。 本研究の学術的な特徴として、発生過程を模倣したHUVEC細胞と共培養することによってin vitroでCD34陽性CD38陰性CD90陽性の造血幹細胞様血球を効率よく作成させることが可能となった点である。これまで、造血幹細胞はin vitroでは作成することができなかったが、本法ではそれを可能とし、HUVEC細胞との共培養で可能としたことが独創的な点である。これまの移植ソースは、健常者の骨髄や、臍帯血を使用したが、iPS細胞から作成した造血幹細胞をドナーソースとして用いることが可能になれば、骨髄採取が必要でなくなる。本研究によって、iPS細胞を造血幹細胞に再分化することは、移植のドナーの概念を根本から変える可能性がある。HLAの一致した人の少量の採血のみでiPS細胞を作成することができ、必要なときに必要な量の造血幹細胞を作成できる。これは、最適な移植時期と最適な移植片を選択することが可能になることを意味しており、移植の成績を著しく向上させることが予想され、医学的な貢献が多大である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、樹立したiPS細胞をヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC細胞)と共培養、及びサイトカインで誘導することによって、iPS細胞からCD34陽性CD38陰性CD90陽性の造血幹細胞様血球を作成、および多系統の血液細胞への分化誘導させることを可能とした。具体的には、iPS細胞を10T1/2細胞と共培養し、day1からday4にBMP4、day4からday9までIL3、day9からSCF、FLT3、TPO、IL3、VEGFをサイトカインで刺激すると、造血幹細胞に認められるCD34陽性CD38陰性CD90陽性分画(58.1%)を認めた。また、この方法では、非常に効率よく造血幹細胞様の血球を産生することを可能とした。誘導したCD34陽性造血前駆細胞を、骨髄系、赤芽球系、巨核球系の3系統に分化誘導したところ、多系統への分化能が保持されていることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
①ヒトiPSから分化誘導した造血幹細胞様血球を免疫不全マウスへの移植実験 iPS細胞から誘導した造血幹細胞様血球が造血再構築をin vivoで再現出来るか検討する。 ②ヒト骨髄中CD34陽性造血幹細胞とiPS由来造血幹様血球の網羅的発現解析 網羅的解析により、発現遺伝子及びメチル化において両者がどの程度類似しているか検討する。 ③造血幹細胞への誘導に必要十分な候補遺伝子の同定 骨髄中CD34陽性細胞と誘導したiPS由来造血幹細胞様血球で違いのある候補遺伝子を抽出。
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