研究課題/領域番号 |
15K09454
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
冨山 佳昭 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (80252667)
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研究分担者 |
柏木 浩和 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (10432535)
加藤 恒 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20705214)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インテグリン / αIIbβ3 / 血小板 / CalDAG-GEFI / Rap 1 / kindlin3 |
研究実績の概要 |
本研究では、血小板機能の中核をなすインテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の制御分子の同定、解析を目的としている。申請者らは、本研究においてすでにインテグリンαIIbβ3活性化の制御分子であるCalcium and diacylglycerol (DAG)-regulated guanine nucleotide exchange factor I (CalDAG-GEFI)の欠損例(世界4例目)の同定に成功している(Blood 2016)。本症例では1歳時より輸血が必要な重度鼻出血を繰り返し、思春期には重度の生理出血に悩まされている。血小板機能では、PMA以外のアゴニスト刺激全般においてαIIbβ3活性化が障害されていた。患者のCalDAG-GEFIの遺伝子異常はLys309XとLeu360delの複合ヘテロ接合体であり、この変異によりCalDAG-GEFIの発現が欠損することを発現系で示した。申請者らが開発したαIIbβ3活性化のvelocity解析にて、本例ではその活性化の著明な遅延が明らかとなったが、最終的なαIIbβ3活性化はPAR1刺激では50%以上の活性化が観察された。さらに血流化での血栓形成モデルにて、血栓形成の障害も明らかとなった。これらの知見よりCalDAG-GEFI欠損例での出血傾向はαIIbβ3活性化の遅延に起因することを示し、αIIbβ3活性化の速度制御により、病的血栓と止血栓形成を分離しうる可能性が示唆された。 一方、新たな血小板機能異常症の患者解析により、kindlin3の欠損例を見出している。今後は新規症例の解析を進めると共に、CalDAG-GEFIとkindlin3の血小板活性化いよびαIIbβ3活性化における機能解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在まで、マウスにおける解析結果が中心であったαIIbβ3活性化機能制御分子であるCalDAG-GEFIの機能に関して、本研究においてヒトのCalDAG-GEFIの欠損例(世界で4例目)を同定することができ、欠損患者の病態および血小板機能、特にαIIbβ3活性化や血流下での血栓形成能を詳細に解析し、この分子の重要性を明らかにできた。基本的にはマウスの欠損例と同様の結果であったが、ヒトにおいてはマウスと異なり好中球の機能異常には大きな障害がないことを示すことができた。さらに、血流下での血栓形成におけるCalDAG-GEFIの役割に関しても明らかにできた。 さらに、申請者らは、新たにαIIbβ3活性化機能制御分子であるkindlin3欠損患者を同定することに成功している。さらにトロンビン受容体であるPAR4の多型性の血小板機能への影響に関しても解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、kindlin3欠損患者の病態解析、血小板機能解析、特にαIIbβ3活性化のvelocity解析および血流下での血栓形成、を明らかにし、CalDAG-GEFI欠損例や申請者らが同定したP2Y12欠損例との詳細な比較検討を行う予定である。 さらに、巨核球系細胞株を用いた遺伝子改変や遺伝子導入による各種制御分子のαIIbβ3活性化への影響を解析する予定である。
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