研究課題
本研究では、血小板機能の中核をなすインテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の制御分子の同定、解析を目的としている。申請者らは、本研究においてすでにインテグリンαIIbβ3活性化の制御分子であるCalcium and diacylglycerol (DAG)-regulated guanine nucleotide exchange factor I (CalDAG-GEFI)の欠損例(世界4例目)の同定およびその機能解析に成功している(Blood 2016)。本年度は、トロンビン受容体からのαIIbβ3活性化に関して、PAR4受容体の多型に着目して解析を行った。健常人202名に関して、PAR4受容体120番目のアミノ酸多型rs773902(Ala120、Thr120)と不可逆的な血小板凝集の惹起に必要なPAR4アゴニスト濃度を比較検討した。多型の頻度は、57%がAla120のホモ接合体であり、5.9%がThr120のホモ接合体であった。機能解析では、Thr120を有する血小板では、Ala120を有する血小板に比べ有意差を持って低濃度のPAR4活性化ペプチドにて不可逆的な血小板凝集が誘導された。さらにαIIbβ3活性化およびPセレクチンの発現に関しても、Thr120において、より低濃度刺激にて活性化が誘導された。この差はGqの下流シグナルであるERKリン酸化の差異と相関したが、G13の下流分子のmyosin light chainのリン酸化は差異を認めなかった。さらに293T細胞においてPAR4を強制発現させ検討し解析した結果、細胞内Ca2+動員、ERKリン酸化とAla120Thrの多型との相関が示された。今回の検討にて、PAR4多型によりPAR4活性化ペプチドによる血小板の反応性に差があることが明らかになった。
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