血液凝固カスケードは、炎症および免疫反応と密接に関連している。ヒストンは損傷した宿主細胞あるいは白血球細胞から放出され、炎症に伴う血栓症のメディエーターとして作用する。血小板の活性化および凝集はヒストン誘発性血栓症の原因として知られているが、好中球依存性のメカニズムについて不明である。本研究では、ヒストンによる好中球・血小板相互作用の増強と血栓形成へのメカニズムを探求した。 好中球を免疫学的に除去したマウスおよび白血球インテグリンMac-1の欠損マウスでは、ヒストン誘発性肺血栓塞栓症においてマウスの生存を延長した。ヒストン誘発血栓症のメカニズムをさらに調べるために、血漿の存在下にヒト血小板と好中球との相互作用によって誘導される血漿凝固産物を定量化する濁度測定技術を利用した。ヒストンは、血漿存在下に両細胞の共培養による血漿凝塊生成を増大させた。また共培養系におけるフローサイトメトリー分析により、ヒストンは血小板/好中球複合体形成を増強し、これは抗CD40L、抗Mac-1抗体によって阻害された。また、抗CD40Lにより好中球のMac-1の活性化が抑制された。一方、好中球をヒストンにより刺激するとMac-1が活性化し、好中球上のToll様受容体(TLR)-2および4の発現を誘導した。 Mac-1活性化は、TLR-2および4の阻害剤によって抑制され、ヒストンが血小板TLRを介して直接的に好中球を活性化することができることを示唆している。これらのデータは、ヒストンは血小板だけではなく好中球にも直接作用し、CD40 / CD40Lを介して好中球・血小板相互作用が増強しMac-1依存性血栓塞栓症を誘発することを示しており、これは炎症誘発性血栓症の新たな治療標的となりうることを示唆した。
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