研究課題/領域番号 |
15K09461
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松村 到 近畿大学, 医学部, 教授 (00294083)
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研究分担者 |
平瀬 主税 近畿大学, 医学部, 講師 (30548590) [辞退]
田中 宏和 近畿大学, 医学部, 講師 (40360846)
森田 泰慶 近畿大学, 医学部, 講師 (80411594)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 白血病 / 阻害薬 / 分子標的 |
研究実績の概要 |
分子標的薬の開発により造血器腫瘍の治療成績は画期的に改善した。一方、急性骨髄性白血病(AML)では、未だ安全性の高い有効な薬剤は開発されていない。申請者らは、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の細胞内膜輸送に関わるCALM のノックアウトマウスを作成し、造血幹/前駆細胞のSCF/KIT 依存性増殖が強く障害されることを見出した。さらに、膜輸送の阻害薬であるchlorpromazine(CPZ)が、KIT D816FやFLT3-ITD などの活性型変異RTK を有する白血病細胞の増殖・生存を強く抑制することを見出した。本研究では、AML の患者サンプルを用いてCPZ の抗白血病効果を明らかにするとともに、CPZ などの細胞内膜輸送阻害薬による新規白血病治療法の臨床応用を目指している。 本年度は、in vivoにおけるCPZの抗白血病効果について検討を行った。患者骨髄より単離した変異RTK(+)あるいは変異RTK(-)の白血病細胞をNOGマウスに移植し、白血病発症を確認後、CPZを有効血中濃度範囲内で8-10週間腹腔内投与した。変異RTK(+)白血病細胞を移植したマウスではCPZ投与により、白血病細胞の著明な減少を認め、生存期間の有意な延長を認めた。また、一部変異RTK(-)細胞を移植したマウスでも、白血病細胞の減少を認めた。生食を投与したコントロール群の白血病細胞では、変異RTKは細胞内小器官に局在し、異所性に下流シグナルを伝達していた。一方、CPZ投与群の白血病細胞では、変異RTKは細胞質に散在し、シグナル伝達が著明に抑制されることで、G1期での細胞周期停止、細胞死が誘導されていた。同様の効果は、クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害薬であるchloroquine, Pitstopなどを用いたin vitroの系においても確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の計画として、 1. in vivo、in vitroでのCPZの抗白血病効果、 2. シグナル伝達、アポトーシス制御の観点からのCPZの抗白血病効果についての解析を予定した。 ほぼ計画通りに研究を遂行できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は、CME阻害薬の臨床応用に向けた取り組みとして、CPZ以外の細胞内膜輸送阻害薬に関する企業との共同研究や、医師主導型臨床治験に向けたプロトコル作成を始動するとともに、基礎的検討として、EGFR、Metなどの活性型変異RTKを有する固形腫瘍に対する抗腫瘍効果をin vitro, in vivoで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度分は、主に試薬の購入に充当する費用として算出していたが、予定よりも少額に収まったため、次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の遺伝子、タンパクの発現解析などに必要な試薬、抗体、実験動物等に研究費を使用する予定である。 また国内、国外の学会における旅費、論文投稿料にも使用する予定である。
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