研究課題/領域番号 |
15K09462
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
浜口 功 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 部長 (90348780)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | HTLV-1 / キャリア / モデルマウス / 潜伏感染 |
研究実績の概要 |
これまでの検討より、ヒト臍帯血由来の造血幹細胞をNOJマウス肝臓内に移植することで効率良くヒト化マウスを作製する手法を確立した。これらのマウスにHTLV-1を感染させることで、HTLV-1の新規感染と、感染したクローンが経時的に増殖するHTLV-1キャリアマウスモデルの確立に成功した。 一方、HTLV-1キャリアの疫学調査の結果より、感染者のうち50代の女性において血中プロウイルスロードが他の世代よりも有意に高くなることを見出した (Lancet Infect Dis. 2016)。この世代は女性の閉経時期と重なり、HTLV-1感染と性ホルモンの関与が疑われ、次の結果を得ている。①HTLV-1感染細胞がマウス卵巣内に集積すること、②エストロジェンの合成阻害剤を投与することで血中の感染細胞数が増加すること。これらの結果は、HTLV-1感染が性ホルモンの影響を受けていることを示唆し、潜伏感染の新しい機序が考えられた。 本研究課題において確立したHTLV-1キャリアモデルは、上述のように個体レベルでの感染動態の解明に有用であると考えられるが、一方で、一部の感染者で見られる低プロウイルスロードの潜伏感染状態が再現されていない。そこで、これまでのヒト化マウス個体内では誘導が困難であったHTLV-1特異的細胞性免疫機構を誘導するために、HLA-A*02:01遺伝子をMHCクラスIプロモータの制御下で発現させた重度免疫不全Tgマウス (NOG-HLA-A2 Tg)に対して、HLA-Aアリルが一致する造血幹細胞を移植することで新規ヒト化マウスの作製を目指した。NOG-HLA-A2 Tgマウスを実験動物中央研究所より導入し、維持繁殖によってコロニーを確立させ、一部個体においてはヒト化移植を実施した。来年度以降、同様のヒト化マウスへHTLV-1を感染させ、その感染・免疫動態を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに確立したHTLV-1キャリモデルを用いて、感染者におけるHTLV-1の感染動態を解析し、その結果、性ホルモンとHTLV-1感染との関与を明らかにしてきた。その一方で、より感染者の感染状態を反映したモデルの構築を目指し、HLA-A*02:01遺伝子をMHCクラスIプロモータの制御下で発現させた重度免疫不全Tgマウス (NOG-HLA-A2 Tg)を導入し、維持繁殖によってマウスコロニーを確立した。来年度以降、新規ヒト化マウスモデルの確立と共に、免疫監視下でのHTLV-1の感染動態を解明する。
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今後の研究の推進方策 |
生体内でのHTLV-1感染細胞の動態、特にクローナリティの変化やクローン選択には、宿主の免疫機構と感染細胞の相互作用が大きな影響を与える可能性が指摘されている。より実際の感染者の生体内状態を再現するHTLV-1キャリアモデルの確立においては、ヒト型免疫応答を有するヒト化マウスの確立が必須である。そこで、来年度以降においては、免疫関連分子を導入した免疫不全マウスを用いることで、HTLV-1特異的免疫応答を誘導した新規ヒト化マウスモデルの構築を目指す。具体的には、HLA-A*02:01遺伝子を導入した免疫不全マウス (NOG-HLA-A2 Tg) に対して、HLA-Aアリルが一致する造血幹細胞を移植することでヒト化マウスを作製する。同ヒト化マウスへHTLV-1を感染させ、生体内での感染細胞の動態及び抗ウイルス免疫機能を評価する。 また、感染者への治療法・発症予防法確立のため、既存の抗ウイルス薬よりHTLV-1感染細胞へ殺傷効果を持つ化合物をスクリーニングする。増殖抑制試験において複数のHTLV-1感染細胞株へ薬効を示す化合物を選別し、さらに、本研究課題において確立したHTLV-1キャリアモデルへ投与することにより、個体レベルでの治療効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品時にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり
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