研究実績の概要 |
β3インテグリンは血小板、血管構成細胞、腫瘍細胞などに発現する接着受容体であり、血栓症や血管病の発症・進展および腫瘍の浸潤・転移において重要な役割を果たしている。しかし、インテグリン機能発現における分子機構の全容は明らかではない。申請者らは発現クローニング法によりintegrin-linked kinase(ILK)がβ3インテグリンの機能発現に関わる因子の1つとして単離報告した。本研究では、ILK結合タンパク質の1つである細胞内タンパク質キンドリンに着目し、インテグリン機能発現のメカニズムを明らかにする。また、キンドリンが関連する細胞内タンパク質や新たなインテグリン機能発現因子の探索実験など基礎的研究を通じて、創薬シーズとしての展開を目指している。 今回は前年度においてクリスパー・キャス9ゲノム編集法を用いて樹立できたキンドリン-3欠損ヒト赤芽球白血病(HEL, human erythroleukemia)細胞を用いてキンドリンのドメイン機能を検討した。方法としてミュータントのキンドリン-3を欠損細胞に導入してインテグリン機能発現への影響を観察した。キンドリンの各サブドメインを除去したミュータントを作製し導入実験を行ったところ、キンドリン-3欠損細胞のαIIbβ3はアゴニスト刺激に対して応答能を欠如し、野生型キンドリン-3の導入によりαIIbβ3の活性化機能を回復できた。一方、各サブドメインを個別に欠損させたミュータントはいずれも活性化誘導能に障害を認めた。
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