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2017 年度 実施状況報告書

転写因子の翻訳後調節による細胞増殖オン・オフの制御

研究課題

研究課題/領域番号 15K09464
研究機関東北大学

研究代表者

峯岸 直子  東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (40271895)

研究分担者 勝岡 史城  東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 准教授 (30447255)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード血液腫瘍学 / 転写因子 / GATA因子 / 細胞周期制御 / 翻訳語調節
研究実績の概要

本研究では、転写因子の翻訳後調節が細胞増殖の開始や停止の決定において果たす役割を明らかにする。
研究代表者は長年にわたって、GATA転写因子群の研究を行なってきた、GATA転写因子は哺乳類ではGATA1からGATA6までの6種類が知られており、それぞれに共通の構造を持つジンクフィンガーにより、共通の標的配列WGATARに結合可能である。そのため、同一の標的遺伝子に結合するGATA因子が入れ替って細胞の分化段階を制御している例も報告され、因子の蛋白質分解の制御が細胞の分化や増殖の制御に関わっている可能性も予想される。特に、GATA2とGATA3はジンクフィンガー以外の部分の構造についても相同性が非常に高く、共通の構造にあるアミノ酸残基がリン酸化されて、ユビキチン化依存性のタンパク質分解を引き起こす(Koga 2007, Nakajima 2015)。このリン酸化にはCyclin dependent kinase (CDK)が関与しているが、どのCDKが重要なのか、増殖刺激やシグナル伝達系によるリン酸化と関係するかなど、その制御については未解明の部分が多い。
研究代表者は、造血幹細胞・前駆細胞の制御に重要なGATA2について、主にマウスの系を用いて解析を行い、GATA2の発現およびそのリン酸化が、サイトカイン増殖刺激後の細胞周期の進行に伴うサイクリン等の発現の推移と密接な関係にあることを明らかにし、さらに、全ゲノム情報が紐づいたヒト末梢血細胞および由来細胞を多数保有する機関に研究代表者が初速する利点を生かして、ヒトT細胞のサイトカイン依存性増殖におけるGATA3の役割についても検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

過去の研究実績に基づいて、マウス造血幹細胞や前駆細胞の増殖の調節に関わる転写因子GATA2を中心に検討を行った。さらに、研究代表者は、全ゲノム解析情報が明らかな多様性に富んだヒトリンパ球を保存するバイオバンクの運営に関わる立場であり、サイトカイン刺激などによるTリンパ球の活性化が多くの疾患発症と関わる可能性が報告されていることから、Tリンパ球の制御に重要な働きをするヒトGATA3を研究対象とすることとして検討を進めた。
GATA3はマウス-ヒト間およびGATA2との相同性が高く、ユビキチン依存性分解に関わるアミノ酸残基も共通である。研究代表者の所属組織は10万人以上の方の末梢血細胞を保存しているが、そのうち、全ゲノム解析が実施された2000人を超える人について、Epstein-Barrウィルス感染による不死化細胞株を樹立しており、その際に不要となるTリンパ球についてもInterleukin2+抗CD28抗体で刺激して増殖させた後に保存している。そこで、それらの全ゲノム情報をもとに、リン酸化部位の遺伝子変異/多型を持つ例など、候補となる細胞を探索した。
しかし、遺伝的背景が個人ごとの遺伝的背景の違いを考慮すると同一の変異を持つものとして数例以上の細胞が必要であり、そのような条件を満たす候補細胞を見つけることはできなかった。また、細胞周期のオンオフの解析をするためには、一度細胞増殖を停止させた後で、細胞周期を同調して培養する条件を見いだすことが必須であるが、最適な条件を決定することが困難であり、特定の細胞周期の細胞を揃えてChIPseqのような網羅的な解析を実施するには至らなかった。

今後の研究の推進方策

上記の理由から、T細胞の実験については今後の検討課題とすることとし、現在論文として準備したGATA2に関する内容について、すでにあるRNAやChIP解析の試料を用いてRNAseqやChIPseqなどの網羅的な解析を行うなど、根拠となるデータを補充し、査読者対応などを含めて成果発表を目指す。

次年度使用額が生じた理由

体調不良などで研究に供する時間も不足したこともあるが、T細胞を用いた研究については実験条件の設定や細胞の選定などの段階で支障が生じて、ChIPseqやRNAseqなど予定した網羅的解析まで進むことができなかった。
次年度には、マウスGATA2関連の実験時に保存してある試料(同調培養におけるRNAおよびChIP後のDNAなど)を用いて網羅的な解析を実施する予定である。また、論文投稿用の費用として利用する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Multiancestry genome-wide association study of 520,000 subjects identifies 32 loci associated with stroke and stroke subtypes2018

    • 著者名/発表者名
      Malik R, Chauhan G, Traylor M, Minegishi N, AFGen Consortium,BioBank Japan Cooperative Hospital Group; MEGASTROKE Consortium
    • 雑誌名

      Nat Genet

      巻: 50 ページ: 524-537

    • DOI

      10.1038/s41588-018-0058-3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Construction of full-length Japanese reference panel of class I HLA genes with single-molecule, real-time sequencing2018

    • 著者名/発表者名
      Mimori T, Fumiki K, Sakae S、Naoki N, 、Akira O, Minegishi N, Kinoshita K, Nagasaki M, Yamamoto M
    • 雑誌名

      Pharmacogenomics

      巻: 63 ページ: 213-230

    • DOI

      10.1038/s41397-017-0010-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Evaluation of reported pathogenic variants and their frequencies in a Japanese population based on a whole-genome reference panel of 2049 individuals2017

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi-Kabata Y, ToMMo Study Group, Yasuda J, Nagasaki M, Katsuoka F, Minegishi N, Yamamoto M
    • 雑誌名

      J Hum Genet

      巻: 63 ページ: 213~230

    • DOI

      10.1038/s10038-017-0347-1

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Genome-wide association study identifies 112 new loci for body mass index in the Japanese population2017

    • 著者名/発表者名
      Akiyama M, Okada Y, Kanai M, Takahashi A, Momozawa Y, Ikeda M, Iwata N, Ikegawa S, Hirata M, Matsuda K, Iwasaki M, Yamaji T, Sawada N, Hachiya T, Tanno K, Shimizu A, Hozawa A, Minegishi N, Tsugane S, Yamamoto M, Kubo M and Kamatani Y
    • 雑誌名

      Nat Genet

      巻: 49 ページ: 1458-1462

    • DOI

      10.1038/ng.3951

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ecurity controls in an integrated Biobank to protect privacy in data sharing: rationale and study design2017

    • 著者名/発表者名
      Takai-Igarashi T, Kinoshita K, Nagasaki M, Ogishima S, Nakamura N, Nagase S, Nagaie S, Saito T, Nagami F, Minegishi N, Y. Suzuki, K. Suzuki, H. Hashizume, S. Kuriyama, A. Hozawa, N. Yaegashi, S. Kure, G. Tamiya, Y. Kawaguchi, H. Tanaka and M. Yamamoto
    • 雑誌名

      BMC Med Inform Decis Ma

      巻: 17 ページ: 100

    • DOI

      10.1186/s12911-017-0494-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 503 Genome-wide association study identifies novel susceptibility loci for tanning ability in Japanese population2017

    • 著者名/発表者名
      Shido K., Kojima K, Hozawa A, Ogishima S, Minegishi N, Kawai Y, Tamiya G, Tanno K, Yamasaki K, and Aiba S
    • 雑誌名

      J Invest Dermatol

      巻: 137 ページ: S86

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Contribution of a Population-Based Biobank to Improving the Health Status of the Japanese Population2017

    • 著者名/発表者名
      Minegishi N, Yamashita R, Nobukuni T, Nishijima I, Kudo H, Terakawa T, Ishida N, Hozawa A, Tomita H, Nagasaki M, Yamamoto M, Tohoku Medicak Megabank Project Study Group
    • 雑誌名

      Biopreservation and biobanking

      巻: 15 ページ: A49

    • DOI

      10.1089=bio.2017.29021.abstract

    • 査読あり
  • [学会発表] Quality Management in TMM Biobank: Standardization Enhances Collaboration.2018

    • 著者名/発表者名
      Naoko Minegishi
    • 学会等名
      Workshop on Quality Control and Standardization of Biobanks and Biobanking
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 東北メディカル・メガバンク計画バイオバンクの保存試料とその利用について2017

    • 著者名/発表者名
      峯岸直子
    • 学会等名
      第24回クロマトグラフィーシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Baseline Collection and the 2nd Stage Activity of TMM Biobank2017

    • 著者名/発表者名
      Naoko Minegishi
    • 学会等名
      第2回 カロリンスカ研究所・東北大学合同会議
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] TMMバイオバンクの試料・情報利活用における課題2017

    • 著者名/発表者名
      峯岸直子
    • 学会等名
      放射線影響研究所ワークショップ「生物試料を用いる共同研究で求められる倫理的配慮」
    • 招待講演
  • [図書] ヒト疾患のデータベースとバイオバンク 第2章 概論 疾患データベースとバイオバンクの現状と動向2017

    • 著者名/発表者名
      峯岸直子
    • 総ページ数
      227
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-0366-4

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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