研究実績の概要 |
造血器腫瘍細胞の発症や進展に重要な恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体であるBCR/ABLやJak2-V617Fが、Chk1を介した抗癌剤誘導性チェックポイント活性化を促進する機構におけるp53の役割を検討し、p53の優勢抑制型変異体の発現によりChk1活性化が促進され、異常チロシンキナーゼの阻害薬と抗癌剤との併用によるアポトーシス誘導が阻害される事を明らかにした。一方、Mdm2阻害薬であるnutlin-3によるp53活性化の誘導により、チロシンキナーゼ耐性変異T315I変異陽性のBCR/ABL発現細胞でも、有効な治療効果が期待される事を見出した。さらにBCR/ABL,Jak2-V617FおよびFlt3-ITDを発現した白血病細胞およびモデル造血細胞株を用いて検討を行い、p53がp21などの標的遺伝子産物の発現誘導を介して、PI3K/Akt/GSK3経路には非依存性にユビキチン・プロテアソーム系により抗癌剤誘導性のChk1の活性化を抑制することを見出し報告した(Umezawa Y. et al., Oncotarget, 7:44448-44461, 2016).また、急性骨髄性白血病で最も頻度の高いFLT3-ITD遺伝子変異を有する白血病細胞が、PI3K/AKT活性化シグナル伝達経路とSTAT5活性化経路を阻害することによりmTORC1/4EBP1/mTOR経路が相乗的に抑制される事を報告してきたが、その分子機構にはSTAT5によるPimキナーゼの発現誘導と、PimキナーゼによるmTORC1の活性化が重大な役割を果たしていることを見出し、Pimキナーゼ阻害薬とPI3K/AKT阻害薬により著明な治療効果の促進が期待出来る事を明らかにした(投稿準備中)。
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