研究実績の概要 |
急性骨髄性白血病で最も頻度の高く、治療抵抗性ももたらすFLT3-ITD遺伝子変異を有する白血病細胞では、強力なSTAT5活性化を介してmTORC1/4EBP1/mTOR経路の活性を維持することで、PI3K/AKT阻害薬への耐性を獲得することを見出し報告してきたが(Nogami A. et al., Oncotarget. 2015; 6:9189-205)、その分子機構についてさらに解析を進め、STAT5活性化により発現が誘導されるPimキナーゼが、mTORC1の活性化の促進に重大な役割を果たし、抗アポトーシス機能を有するBCL2ファミリー蛋白MCL1の発現をmRNA翻訳過程で維持することを見出し、Pimキナーゼ阻害薬とPI3K/AKT阻害薬により著明な治療効果の促進が期待出来る事を明らかにし報告した(Okada K. et al., Oncotarget. 2018; 9: 8870-86)。また、白血病細胞を含めた造血細胞の生体内での調節機構に重要な役割を果たすケモカインであるSDF-1の細胞調節分子機構につき解析し、造血細胞の接着因子であるPECAM-1がSDF-1刺激によりLynやBTK等のチロシンキナーゼによりリン酸化され、SDF-1受容体CXCR4と直接結合することにより、原発性マクログロブリン血症で高頻度に認められるCXCR4の点突然変異と同様に、CXCR4のエンドサイトーシスを抑制することで、その細胞表現発現の上昇をもたらし、PI3K/Akt/mTORC1シグナルやRap1の活性化の亢進を介して細胞遊走を増強する分子機序を見出し報告した (Umezawa Y. et al, J Biol Chem. 2017; 292:19639-55)。
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