研究課題/領域番号 |
15K09469
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
樋口 雅也 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50334678)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | USP10 / 造血幹細胞 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
USP10ノックアウト(KO)マウスは骨髄不全を伴う悪性貧血により生後1年以内にすべて死亡する。これは胎生期より始まる造血幹細胞(HSC)のアポトーシスによるHSCの枯渇が原因であることが、本研究より明らかとなっている。このアポトーシスの分子メカニズムを明らかにするため、胎仔肝臓由来HSCのin vitro培養を試みた。胎生14.5日の胎仔より肝臓細胞を調整し、SCF、FLT3-ligand、TPO、IL-3、IL-6のサイトカイン存在下で培養を行ったところ、WT、KO細胞とも同程度に増殖し、一週間後には約6割の細胞がLineage (-) c-Kit (+) Sca-1 (+): LSK細胞となった。したがって十分なサイトカイン存在下では、WTとKO HSCの生存と増殖には差が無いことが明らかとなった。しかしながら、このin vitro培養系でサイトカインを飢餓状態にすると、KO LSK細胞はWTに比べ急速にアポトーシスに陥ることがわかった。KO細胞にWT USP10を戻すとアポトーシスは抑制されたが、脱ユビキチン化活性のない変異体(C418A)では抑制できなかった。このことから、USP10はサイトカイン飢餓ストレス下において、HSCのアポトーシスを抑制していることが明らかとなった。 続いて、KO HSCのサイトカイン飢餓への脆弱性のメカニズムを探るため、細胞生存やアポトーシスに関与する蛋白質についてウエスタンブロットによる解析を行った。p53、SIRT6、Beclin1、VPS34、p62、LC3、FOXO3A、Bcl-2、Bcl-xL、Mcl-1、Bax、Puma、p-S6、p-Akt、p-p65について解析したが、WTとKO間で発現量に差は認められなかった。したがって、USP10はこれら以外の経路の蛋白質を脱ユビキチン化していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
USP10の基質を同定するため、USP10の結合蛋白をLC-MS/MSにより網羅的に解析する予定であったが、試料の調製が遅れており、まだ同定には至っていない。また白血病幹細胞維持におけるUSP10の機能を解析するため、USP10コンディショナルKOマウスを作成予定であったが、現在マウスの交配を開始する段階である。さらにBcr-Ablを用いたCMLモデルマウス、HTLV-1 TaxとHBZを用いたATLモデルマウスの作製もまだ計画段階である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまずUSP10の基質となる蛋白質を同定することを目的とする。そのため、USP10 KO LSK細胞に、PAタグを付加したWT USP10およびC418A変異体をレンチウイルスベクターにより発現させ、抗PAタグ抗体で免疫沈降しWT USP10に特異的に結合する蛋白をLC-MS/MSにより同定する。同定された蛋白質に関して、アポトーシス抑制における機能についてin vitro HSC培養系を用いて解析する。 つぎに、白血病幹細胞維持におけるUSP10の機能解析のため、CreERT2マウスとUSP10 floxマウスを交配し、USP10 コンディショナルKOマウスを作製する。このマウスよりHSCを分離し、Bcr-AblまたはTax-HBZを発現させることによりCMLまたはATLを発症させる。その後、タモキシフェン投与によりUSP10をKOし、白血病幹細胞維持におけるUSP10の機能を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度における実験が終了し、必要な試薬等がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、USP10の基質同定実験に使用する試薬を購入する予定である。
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