研究課題/領域番号 |
15K09470
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
桐戸 敬太 山梨大学, 総合研究部, 教授 (90306150)
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研究分担者 |
川島 一郎 山梨大学, 総合研究部, 助教 (20622369) [辞退]
三森 徹 山梨大学, 総合研究部, 助教 (80377514)
野崎 由美 山梨大学, 総合研究部, 助教 (80530104) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低酸素 / 骨髄線維化 / 乳酸 / MCT |
研究実績の概要 |
本年度は、骨髄増殖性腫瘍細胞株HELおよびSET-2を用いたin vitroの解析を中心に研究を進めた。この過程において、以下の研究成果を得た。 (1)乳酸シャトル現象に係る鍵となる分子MCT-1およびMCT-4の発現について解析を行い、低酸素環境での培養(1%02 ;72時間)により、これらの分子の発現が増強することが確認された。 (2)また、この低酸素環境によるMCTの発現誘導が低酸素応答転写因子(HIF-1)に依存するものかについて検証するために、HIFの機能抑制剤であるechinomycinを用いた。echinomycinを用いることにより、低酸素環境でのMCT1およびMCT4の発現誘導が見られなくなることが分かった。すなわち、MCT1およびMCT4の発現誘導にはHIFが必要であると考えた。 (3)糖代謝酵素の発現についてみると、細胞内のグルコール取り込みに係るGLUT-1の発現が誘導されていることが確認された。 (4)低酸素環境において、HELおよびSET-2細胞における乳酸産生が増加するかについて、細胞上清中に分泌された乳酸についても解析した。1%O2環境での培養により、これらの細胞での乳酸産生が増加することが確認された。 以上の結果より、in vitroレベルにおいて、低酸素環境下では骨髄増殖性腫瘍細胞において、糖代謝シフトと乳酸の細胞外排出に係るMCTファミリータンパクの発現誘導がおこること、またこれらの変化に伴って、実際に細胞外環境に乳酸の排出がおこっている事が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、本年度は培養細胞を用いて、骨髄増殖性腫瘍細胞と骨髄間質細胞との間で乳酸シャトル現象が見られるかを確認することを第一の目標としていた。このうち、骨髄増殖性腫瘍細胞側では、低酸素における糖代謝シフトおよび乳酸の排出に係るMCTの発現誘導、さらには実際に細胞外への乳酸排出などを確認することができ、当初の計画通りの進捗があった。一方、骨髄間質細胞についての解析は現在進行中の状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、骨髄間質細胞を用いた解析をまず進行させる。具体的には、骨髄間質細胞が乳酸の取り込みに係るMCTの発現を認めるか、さらには低酸素状態においてMCTの発現および機能がどのように影響を受けるかを調べる。また、低酸素環境あるいは乳酸の作用により骨髄間質細胞が線維芽細胞としての形質を獲得するのかについても、検討を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入費が計画より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として使用する計画である。
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