アグレッシブNK細胞白血病の発症関連遺伝子異常の同定と新規治療法開発

2016 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 15K09471
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 石田 文宏 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (80311695)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: JAK/STAT系 / 遺伝子変異

研究実績の概要

アグレッシブNK細胞白血病（ANKL)は難治性の血液悪性腫瘍のひとつで、多剤併用化学療法や造血幹細胞移植が治療として実施されているものの、有効な治療法が確立していないリンパ系腫瘍である。稀な疾患であるが、Epstein-Barrウイルス(EBV)との関連が深く高率にANKL腫瘍細胞はEBVゲノム陽性であり、また、これまでの報告例が本邦を含めた東アジアに多いことが判明している。本研究ではANKLの病態を明らかにし、精度の高い診断法および有効な治療法開発を目指している。WHO造血器腫瘍分類に基づいてANKLと診断された症例を国内外の研究協力者より20例を収集し検体を得た。DNAを抽出し次世代シークエンス法による解析を行ったところJAK/STAT系の遺伝子異常をはじめ複数のシグナル伝達系での遺伝子異常がANKLの腫瘍細胞に同定された。一部の検体に関しては他の方法にて変異を確認した。ANKLに認められた遺伝子変異量は他の血液腫瘍に比べ多く、疾患の特徴を示唆するものと考えられた。これらの結果はANKLの腫瘍細胞に特定の遺伝子変異が認められることを初めて明らかにしたものでANKLの診断法および治療法開発に貢献するものである。また、以上の結果の一部は第５８回米国血液学会にて発表した。NK腫瘍細胞株を含め解析を継続している。また、比較対照群として解析した大顆粒リンパ球白血病の一部にSTAT5bの活性化型変異が認められ、特定の表面形質と関連していることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画に従い、研究協力者の協力により解析に十分な検体数を収集した。さらに計画した解析法での解析を行い、腫瘍細胞の遺伝子変異を同定する結果を得て一部の成果に関して学会で報告した。以上より、概ね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

症例数を更に増やし、これまでに同定した変異が共通して認められるか更に検討する。また、類縁疾患との比較検討を行う。以上の結果とともに論文として発表する。

次年度使用額が生じた理由

当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

次年度使用額は平成29年度請求額と会わせて消耗品費として使用する予定である。

研究成果

• [国際共同研究] サムソンメディカルセンター(韓国)
  • 国名: 韓国
  • 外国機関名: サムソンメディカルセンター
• [国際共同研究] ヘルシンキ大学(フィンランド)
  • 国名: フィンランド
  • 外国機関名: ヘルシンキ大学
• [雑誌論文] Cell size variations of large granular lymphocyte leukemia; Implication of a small cell subtype of granular lymphocyte leukemia with STAT3 mutations. (2016)
  • 著者名/発表者名: Tanahashi T, Sekiguchi N, Matsuda K, Takezawa Y, Ito T, Kobayashi H, Ichikawa N, Nishina S, Senoo N, Sakai H, Nakazawa H, Ishida F.
  • 雑誌名: Leukemia Res 巻: 45 ページ: 8-13
  • DOI: 10.1016/j.leukres.2016.04.001
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] High incidence of activating STAT5B mutations in CD4-positive T-cell large granular lymphocyte leukemia (2016)
  • 著者名/発表者名: Andersson E, Tanahashi T, Sekiguchi N, Gasparini VR, Bortoluzzi S,Kawakami T, Matsuda K, Mitsui T, Eldfors S, Bortoluzzi S, Coppe A, Binatti A, Lagstrom S, Ellonen P, Fukushima N, Nishina S, Senoo N, Sakai H, Nakazawa H, Kwong YL, Loughran TP, Maciejewski JP, Mustjoki S, Ishida F
  • 雑誌名: BLOOD 巻: 128 ページ: 2465-2468
  • DOI: 10.1182/blood-2016-06-724856
  • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
• [学会発表] Mutational Landscape of Aggressive Natural Killer Cell Leukemia and Drug Sensitivity Profiling Reveal Therapeutic Options in Natural Killer Cell Malignancies (2016)
  • 著者名/発表者名: Dufva O, Kankainen K, Kelkka T, Awad SA, Sekiguchi N, Yadav B, Eldfors S, Kuusanm H, Andersson EI, Malani D, Pietarinen P, Saikko L, Kovanen PE, Suzumiya J, Suzuki R, Ko YH, Kim WS, Chuang SS, Loughran TPJr, Chan WC, Ohshima K, Aittokallio T, Ishida F, Mustjoki S
  • 学会等名: 58th American Society of Hematology Annual Meeting & Exposition
  • 発表場所: 米国サンディエゴ市
  • 年月日: 2016-12-03 – 2016-12-06