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2015 年度 実施状況報告書

悪性リンパ腫の経時的遺伝子変異解析による治療抵抗機序の同定と臨床試験への応用

研究課題

研究課題/領域番号 15K09473
研究機関藤田保健衛生大学

研究代表者

冨田 章裕  藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (80378215)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード悪性リンパ腫 / 遺伝子変異 / 末梢血無細胞遊離DNA / 網羅的遺伝子変異解析
研究実績の概要

初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)(N=17)の初回治療開始前および後(day 2-7)に得られた血漿より末梢血無細胞遊離DNA(PB-cfDNA)を抽出し、濃度を経時的に検討した所、治療開始前濃度が100ng/mL未満の症例(N=9)において、治療前に比べて開始後の濃度が上昇する傾向が確認された。一方、前値が100ng/mL以上の症例(N=8)においては、治療前値に比べ開始後の濃度は同等もしくは低下の傾向を示すことが確認された。
次に、診断時の生検組織から抽出された腫瘍由来DNA(tDNA)と同一症例から得られたPB-cfDNAを用いて、HiSeq2500 (Illumina)による全エクソン解析を行い、遺伝子変異の存在について比較検討を行ったところ(DLBCL 3例、血管内大細胞型Bリンパ腫(IVL) 3例)、概して同等のallele frequencyをもって同様の遺伝子変異が同定された。一部tDNAもしくはPB-cfDNAのみに認められる遺伝子変異が同定されたが、腫瘍組織の部位的多様性による結果である可能性が示唆された。IVLにおいては、骨髄等の検体における腫瘍細胞の混入が少ないため、骨髄単核球から得られた全ゲノムを用いた変異解析は困難であることが予想されたため、骨髄細胞から抗CD19抗体ビーズを用いて腫瘍細胞を精製するほか、NOG免疫不全マウスに異種移植後に増殖してきた腫瘍細胞を採取することを行い、これらの細胞からtDNAを抽出した。このようにして得られたtDNAと同一症例のPB-cfDNAを用いて変異遺伝子の比較検討を行ったところ、それぞれの症例で200-400程度の変異遺伝子が同定され、相同性も確認された。これらの結果から、PB-cfDNAはtDNA由来変異遺伝子を効率よく含み、網羅的遺伝子変異解析においても使用可能であることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2016年1月に施設異動して現在まで、研究環境のセットアップに時間を要している。また、自施設の患者検体を集積するに当たり、倫理審査等経る必要があり、現在必要な手続きを進めているところである。DLBCLの中でも特異な病態を示し、診断にも苦慮するIVLについては、自施設のみの検体集積では困難である。現在までに10例の検体を集積しているが、特異な遺伝子異常などを同定する為には更に10例の検体が必要であると見込んでおり、関連施設含めた検体の集積に向けて、関連班会議他ミーティング等において協力を呼びかけている。また、治療抵抗性獲得症例におけるペア検体についても集積が未だ不十分である。特に初発時検体が欠損する症例が多く、今後初発時から検体を集積して行くシステムを、自施設にて構築するべく、現在仕組み作りに取り組んでいる状況である。

今後の研究の推進方策

施設異動直後であることを踏まえ、自施設においてリンパ腫生検検体及びPB-cfDNAを効率的に集積できるシステムを、倫理審査含めて早急に構築する。初発検体をルーチンで集積するシステムを立ち上げ、初診再発のペア検体などを確実に確保できる環境を整える。経時的に得られる末梢血検体を用いて、PB-cfDNA濃度が病勢を反映するバイオマーカーとなりうるかどうか、また微少残存病変を検出する有効な手段となり得るかどうかについて、症例数を増やして検討する。
IVLに関しては、現在までの10例の検討から、いくつかの疾患関連変異遺伝子の候補を得ている。IVLの病態特異的に働く変異遺伝子を同定するため、さらに症例数を20まで広げて解析をすすめる。特異的な候補遺伝子が抽出される場合には、変異遺伝子導入細胞株及び異種移植モデルマウスを用いて、変異遺伝子が病態に有意であるかどうか解析を行う。
また、初回治療抵抗性もしくは早期再発症例、CD20陰性化再発・再燃症例、中枢神経系浸潤症例、EBVDNA高値症例などの、臨床的に今後さらなる予後改善が求められる症例についてのペア検体も集積し、一定の症例数が得られる群について、抵抗性にかかわる遺伝子異常の同定を行っていく。

次年度使用額が生じた理由

2015年12月31日に前職場である名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学を退職し、2016年1月1日より現職場である藤田保健衛生大学医学部血液内科学に異動をした。異動にともない、科研費の移行手続きを行ったが、研究環境のセットアップ及び予算関連事務手続きの完了に時間を要した。このため、残額の一部を使用せず、来年度使用分として持ち越すこととした。

次年度使用額の使用計画

繰り越し分は、28年度の消耗品購入の為の費用に充当する予定である。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (11件)

  • [雑誌論文] Live-cell single-molecule imaging of the cytokine receptor MPL for analysis of dynamic Dimerization.2016

    • 著者名/発表者名
      Akihiko Sakamoto, Takashi Tsukamoto, Yuji Furutani, Yuki Sudo, Kazuyuki Shimada, Akihiro Tomita, Hitoshi Kiyoi, Takashi Kato, and Takashi Funatsu.
    • 雑誌名

      J Mol Cell Biol.

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development and analysis of patient derived xenograft mouse models in intravascular large B-cell lymphoma.2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuyuki Shimada, Satoko Shimada , Keiki Sugimoto , Masahiro Nakatochi , Miyuki Katayama , Akihiro Hirakawa , Toby Hocking , Ichiro Takeuchi , Takashi Tokunaga , Yusuke Takagi , Akihiko Sakamoto , Tomohiro Aoki , Tomoki Naoe , Shigeo Nakamura , Fumihiko Hayakawa , Masao Seto , Akihiro Tomita , Hitoshi Kiyoi.
    • 雑誌名

      Leukemia

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma: Clincopathological study of 25 cases from Japan with a reappraisal of tissue associated macrophages.2015

    • 著者名/発表者名
      Eladl AE, Satou A, Elsayed AA, Suzuki Y, Shimizu-Kohno K, Kato S, Tomita A, Kinoshita T, Nakamura S, Asano N.
    • 雑誌名

      Pathol Int.

      巻: 65 ページ: 652-60

    • DOI

      10.1111/pin.12357

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discovery of a drug targeting microenvironmental support for lymphoma cells by screening using patient-derived xenograft cells.2015

    • 著者名/発表者名
      Sugimoto K, Hayakawa F, Shimada S, Morishita T, Shimada K, Katakai T, Tomita A, Kiyoi H, Naoe T.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 5 ページ: 1-12

    • DOI

      10.1038/srep13054

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Monitoring of Hepatitis B Virus (HBV) DNA and Risk of HBV Reactivation in B-cell Lymphoma: A prospective observational study.2015

    • 著者名/発表者名
      Kusumoto S, Tomita A, et al. (35名中27番目)
    • 雑誌名

      Clin Infect Dis.

      巻: 61 ページ: 719-29

    • DOI

      10.1093/cid/civ344

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Successful treatment of refractory cold hemagglutinemia in MYD88 L265P mutationnegative Waldenström's macroglobulinemia with bortezomib.2015

    • 著者名/発表者名
      Izumi M, Tsunemine H, Suzuki Y, Tomita A, Kusumoto T, Kodaka T, Itoh K, Takahashi T.
    • 雑誌名

      Int J Hematol.

      巻: 102 ページ: 238-43

    • DOI

      10.1007/s12185-015-1775-3

    • 査読あり
  • [学会発表] Utilization of Peripheral Blood Cell-Free DNA in Myelodysplastic Syndromes: Clinical and Molecular Characteristics and Utilization for Genetic Analyses Using Conventional and Next-Generation Strategies.2015

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Tomita, Yasuhiro Suzuki, Fumika Nakamura, Chisako Iriyama, Mizuho Shirahata-Adachi, Kazuyuki Shimada, Akimi Akashi, Yuichi Ishikawa, Norio Kaneda, Hitoshi Kiyoi.
    • 学会等名
      The American Society of Hematology, 57th Annual Meeting.
    • 発表場所
      Orlando, FL, USA
    • 年月日
      2015-12-06 – 2015-12-06
    • 国際学会
  • [学会発表] MDS における遺伝子異常とその臨床的意義 - 分子異常によって引きおこ される多彩な臨床所見 -2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 学会等名
      第77 回 日本血液学会総会 (コーポレートセミナー)
    • 発表場所
      金沢、ホテル日航金沢
    • 年月日
      2015-10-17 – 2015-10-17
    • 招待講演
  • [学会発表] 悪性リンパ腫における治療抵抗性メカニズムとその克服について.2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 学会等名
      日本 リンパ網内系学会第4 回リンパ腫スキルアップセミナー(コーポレートセミナー)
    • 発表場所
      京都、京都テルサ
    • 年月日
      2015-09-26 – 2015-09-26
    • 招待講演
  • [学会発表] Genetic analyses using peripheral blood cell-free DNA in DLBCL.2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 学会等名
      第55 回 日 本リンパ網内系学会総会 (シンポジウム、英語)
    • 発表場所
      岡山、岡山コンベンションセンター
    • 年月日
      2015-07-10 – 2015-07-10
    • 招待講演
  • [学会発表] Clinical and Molecular Significance of Peripheral Blood Cell-Free DNA in Myelodysplastic Syndromes.2015

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Suzuki, Akihiro Tomita, Chisako Iriyama, Mizuho Shirahata, Kazuyuki Shimada, Akimi Akashi, Yuichi Ishikawa, Hitoshi Kiyoi.
    • 学会等名
      JSH International Synposium,
    • 発表場所
      Karuizawa, Japan
    • 年月日
      2015-05-22 – 2015-05-22
    • 国際学会
  • [図書] 造血器腫瘍アトラス第5版2016

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      863
    • 出版者
      日本医事新報社
  • [図書] 血液疾患最新の治療2017-20192016

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      in oress
    • 出版者
      南江堂
  • [図書] 血液科 研修ノート2016

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      in press
    • 出版者
      診断と治療社
  • [図書] 今日の治療指針 2017年版2016

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      in press
    • 出版者
      医学書院
  • [図書] IMiDs 基礎と臨床20152015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      234
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] 日本臨牀 増刊号 「リンパ腫学」2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      695
    • 出版者
      日本臨牀社
  • [図書] 悪性リンパ腫治療マニュアル改訂第4版2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      325
    • 出版者
      南江堂
  • [図書] 白血病・リンパ腫 薬物療法ハンドブック2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      in press
    • 出版者
      南江堂
  • [図書] 血液疾患 診断・治療指針2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      560
    • 出版者
      中山書店
  • [図書] 白血病診療Q&A 一つ上を行く診療の実践2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      中外医学社
  • [図書] EBM がん化学療法・分子標的治療法2015

    • 著者名/発表者名
      冨田章裕
    • 総ページ数
      713
    • 出版者
      中外医学社

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公開日: 2017-01-06  

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