研究課題
初発及び再発/再燃悪性リンパ腫患者において、リンパ腫組織検体と血漿検体を採取し、症例の集積を行った。血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVL)(N=20)の血漿由来無細胞遊離DNA (PBcfDNA)を用いてその性状を確認し、HiSeq2500 (Illumina)を用いた網羅的変異解析を施行した。IVL由来PBcfDNAの濃度は、他のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者由来PBcfDNAに比べ概して高値である傾向が確認された。また、細胞生物学的に骨髄浸潤を確認したIVL症例より得られた骨髄単核球由来DNA (tDNA)(骨髄腫瘍混入割合10%)、および同時期に採取されたPBcfDNAを用いた全エクソン解析では、検出された変異遺伝子の相同性が高いことが確認され、valiant allele frequencyはtDNAに比べPBcfDNAでより高値であることが確認された。腫瘍混入割合が数%のIVL骨髄検体を用いた検討では、tDNAにおける遺伝子変異は検出できなかったが、同時期に採取されたPBcfDNAでは検出が可能であった。このことから、腫瘍細胞の採取が困難であるIVLにおいて、PBcfDNAを用いた遺伝子変異解析は、感度が高くより多くの症例において有用である可能性が示唆された。またIVL においては、activated B-cell type DLBCLにおいて反復して変異が確認される遺伝子群に変異が集積することが確認され、免疫グロブリン以外の特定の遺伝子におけるsomatic hypermutationも高頻度に確認された。さらに、中枢神経原発リンパ腫等で変異が集積する特定の遺伝子における変異の頻度も高いことが確認された。これらの遺伝子異常がIVLの発症や進展形式に関与するのかどうかについては、次年度の検討課題と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
申請者が2016年1月より施設異動し、実験環境のセットアップ及ぼ臨床検体集積に関する倫理審査に時間を要したが、現在までにいずれも完了し、前施設(名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学)、当該施設(藤田保健衛生大学血液内科)、および連携研究者施設(京都大学医学部腫瘍生物学講座)間における研究連携環境が整った。IVL症例の当初の症例集積目標であった20症例は平成28年度内に達成され、平成29年度においては結果を踏まえた解析が可能となっている。また、DLBCLを含めた症例における検体集積についても、平行して継続されている。
IVLについては、平成28年度までに集積され抽出された特定の遺伝子変異について、その分子生物学的意義および治療標的としての意義を明らかにしていく予定である。また、PBcfDNAを用いた遺伝子変異解析方法がIVLにおいて特に感度が高い印象であることから、本方法を用いた遺伝子診断法の確立が可能であるかどうかについても検討を進める。また、継続して集積されているリンパ腫患者由来の腫瘍細胞および血漿検体よりDNAを抽出し、特に初診時、完全/部分寛解時、再発/再燃時に経時的に採取されている検体を用いて、PBcfDNAを用いた微小残存病変の検出や、治療抵抗性クローンの出現等について検討を進める。本検討を行うにあたり、全ての検体について全エクソン解析を施行していくことは困難であることが予想されるため、リンパ腫パネルを用いたターゲットシークエンス法など新たな遺伝子変異検出方法の導入についても適宜検討していく予定である。
当該研究費にて購入予定であった実験器具の年度内購入が間に合わなかったため、その額に相当する研究費を次年度に繰り越した。
繰越額については、平成28年度に購入予定であった実験器具の購入費用として充当する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (5件)
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