研究課題
骨髄増殖性腫瘍(MPN)のうち、本態性血小板血症(ET)および原発性骨髄線維症(PMF)患者の約3割に変異が認められるCalreticulin(CALR)について、野生型CALRの正常造血における役割、ならびに変異型CALRのMPN発症における役割を明らかにすることを目的として研究を実施している。1)変異CALRのin vitro機能解析: 細胞表面にトロンボポエチン(TPO)受容体であるMPLを発現し、巨核球の形質を有するヒト細胞株を対象に、CRISPR/Cas9システムによる遺伝子編集技術を用いてヒトと相同的なCALR変異のノックインを行い、2種類の細胞株(CMK11-5, F36P-MPL)について安定なトランスフォーマントを得た。CALR変異を導入したCMK11-5細胞は、親株に比して細胞増殖およびTPO感受性の亢進を示した。F36P-MPLの親株はGM-CSFまたはIL-3に依存性の増殖を示すが、CALR変異の導入によって増殖に関するサイトカイン依存性が消失し、リガンド非依存性にSTAT5の活性化が引き起こされることが明らかとなった。われわれの作成したトランスフォーマントは臨床検体と同程度のレベルで発現する変異CALRに依存した増殖を示す希有な細胞株であり、MPNに対する新規薬剤のスクリーニング対象として有用であると考えられる。2)正常CALR及び変異CALRのin vivo機能解析: 52bp欠失のヒトCALR遺伝子変異(CALRdel52)を発現するトランスジェニック(TG)マウスを作成し、ヒトETの病態を再現するモデルの確立に成功した。JAK阻害薬はTGマウスにおいて血小板血症を改善し、骨髄中の巨核球数および造血幹細胞数の増加を抑制した。正常CALRの機能解析については、これまでに作成した血球特異的なCALR発現欠損モデルマウスの解析を継続中である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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