研究課題
骨髄異形成症候群(MDS)/白血病(AML)細胞の遺伝子解析の結果、その遺伝子変異の概要が明らかとされつつある。一方、最近になって、骨髄間質細胞特異的なSbds/β-cateninノックアウト・マウスにおいては、血球細胞の遺伝子異常が蓄積された結果、MDS/AMLを発症することが見出され、ヒトMDSの発症進展におけるニッチ異常が注目されている。そこで、間質細胞におけるHematopoiesis 関連遺伝子の発現をPCRアレイで解析した結果、MDS/AML由来間質において、多数の遺伝子群が低下していることを見出した。特に造血前駆・幹細胞分画を制御する因子に着目して、AML/MDS由来の骨髄間質細胞における遺伝子発現を解析した結果、SCF、HHIP、Jagged-1の発現が、全例で低下していた。さらに、この異常が誘導される分子機構を解析した結果、MDS/AML細胞と間質細胞はBoyden chamberを用いた接着および非接着培養の両者において、遺伝子異常が誘導された。これまで解析していなかった細胞外小胞(extracellular vesicle)の関与を想定し、CD34+AML細胞にGFP遺伝子を導入し、細胞膜をPKH26で赤色蛍光標識した後に、間質細胞との共培養を行った。超解像顕微鏡による解析の結果、ヒト骨髄間質細胞内にGFPシグナルが、び漫性に検出され、PKH26陽性膜成分が細胞膜および細胞内エンドソームに検出されることが明らかとなった。これらのことは、MDS/AML細胞から分泌されたエキソソームは、ヒト骨髄間質細胞にトランスファーされ、多彩な遺伝子群の発現異常を誘導することを示唆しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度に関しては、当初予定していたどおり研究が進行し、順調に成果がえられている。このことから、おおむね順調に進展していると判断した。
今年度の研究により白血病細胞から間質細胞に、エクソソームがトランスファーされることが明らかとなった。今後、エクソソーム内のどの成分が遺伝子発現異常を惹起するのか明らかにする必要がある。また、MDS患者においてもエクソソームのトランスファーが造血不全を惹起する一因となるのか解析する必要がある。
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