研究課題
造血器腫瘍を中心に、SNPアレイによるゲノム増幅を中心とするゲノム再構成の解析や、新規キメラ転写産物の同定を目指して行ったRNAシーケンスのデータから見出した結果を基に、複数の解析を行ってきた。びまん性大細胞型リンパ腫細胞株KPUM-UH1のRNAシーケンスのデータから17種の隣り合った遺伝子間での融合遺伝子(conjoined gene)を同定した。そのうちの12種は臨床検体でも検出することができ、腫瘍発生に何らかの役割を果たしていると考えられた。SNPアレイを用いて行ったゲノムコピー数解析では、17種のいずれの領域でもlossを含めたコピー数の変化は確認できず、これらの融合遺伝子の形成は転写レベルで生じていると考えられた。現在複数の白血病検体のRNAシーケンスデータを用いて同様の解析を行っている。昨年度に同定した、キメラ転写産物形成の際に生じるイントロンのエクソン化については、過去の解析データを確認したところ他の複数のキメラ転写産物でも同様のイントロンのエクソン化が確認できた。それらについてもゲノム融合点との関係を解析することにより、ゲノム配列の中からエクソンとして認識されるための配列の条件を明らかにしていく。今年度は新たに、同一遺伝子内でのエクソンの順番が前後する遺伝子再構成を10種以上の遺伝子で同定した。これらの遺伝子再構成は主として遺伝子増幅部位から同定したが、欠失部位での形成も確認している。今後このような遺伝子再構成を形成しているゲノムの正確な構造を決定することにより、ゲノム再構成のメカニズムを解明していく。以上のように、研究開始当初には予想できなかったような新しいタイプの異常が、膨大なシーケンスデータや新規症例の解析から次々と見出されており、引き続きデータを詳細に解析することにより、ゲノム異常形成の正確なメカニズムを明らかにしていきたい。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
Leuk Lymphoma
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