研究課題
本年度は、ストローマ細胞との共培養が薬剤耐性に与える影響について解析するために、様々な抗腫瘍剤を用いて培養実験を行い、細胞内外に認められる変化について解析を行った。MDS-L細胞を骨髄ストローマ細胞株UBT7細胞と共培養し、レナリドミドを加えたところ、共培養系ではMDS-L細胞のアポトーシス誘導が減弱している事を確認した。そこで、現在はレナリドミド投与前後の各種接着因子などの発現状況について解析を行い、細胞内の遺伝子発現パターンの変化について解析を進めているところである。また、その他の薬剤でも同様の実験を行っているが、例えばボルテゾミブはストローマ細胞へのダメージが大きく、ストローマ細胞自体が障害されてしまうため、十分に機能する培養系の確立が難しい。レナリドミドと並行して、研究に使用可能な薬剤および培養系の確立も並行して行っている。マウス間葉系幹細胞細胞の取得については、従来の論文を参考に該当細胞を採取し、増幅を行った。ただ、予想より採取量が少ないという問題が認められている。コラゲナーゼを使用した採取法の改善や低酸素条件下での培養増幅など、細胞が安定して得られるよう実験系の改善を行い、ストック細胞の増加を進めている。ヒトからの間葉系幹細胞採取、細胞バンクの確立についても準備を進めており、本研究内容について、本学倫理委員会の審査が終了した。今後はMDSやその他の造血器腫瘍患者からの検体採取を開始し、解析を開始する予定である。
3: やや遅れている
ストローマ細胞との培養においてはほぼ予定通りの進捗となっている。マウスからの間葉系幹細胞の採取については採取効率が予想より悪く、検体採取はできているが十分な細胞量が得られていない。また、ヒト検体については倫理委員会の承認が得られ、実際の症例からの採取が可能にはなっているが、承認がやや遅れたため、まだ症例からの採取には至っておらず、やや予定より遅れている状況である。
計画書に記載された計画を着実に遂行できるよう研究手法を工夫し、研究を進めていく。間葉系幹細胞の採取について、使用酵素や手順の見直しを行い、より効率の良い採取方法を確立する。また、低酸素条件を利用するなど培養条件の改善も試みる。ヒト検体については、外来・病棟にて対象となる被験者に説明して同意をいただき、検体採取を着実に進めていく。
培養実験などにおける試薬およびプラスティックウェア等の使用実績はほぼ予定通りであったが、マウス間葉系幹細胞の採取効率が予想より低く、得られた細胞数が少ないため、使用した試薬類が予定より少量であった。また、倫理委員会の通過にやや手間取ったため、今年度はヒト検体の採取・培養・増幅例がなく、予定していた試薬・プラスティックウェアの使用実績がなかった。
来年度は、上記間葉系幹細胞の採取効率を向上させて、十分な細胞量で研究を行う方針である。使用マウスの増加や必要試薬の増加が見込まれる。また、患者検体の採取を行い、今年度十分に施行されなかった細胞処理・細胞バンクの構築を本格化させる方針である。次年度使用額は、本年度から一部移行したこれらの研究活動に有効に充当する。
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