研究実績の概要 研究期間内に活性酸素(ROS)を介する多発性骨髄腫の増殖制御に必須な分子として転写因子NF-κBシグナルと細胞周期チェックポイントキナーゼWEE-1を標的とした解析が重要であることを明らかにした。申請者が新たに見出したNF-κB阻害活性を有するTM-233は、骨髄腫細胞のNF-κB p65サブユニットに直接結合して骨髄腫細胞の増殖を抑制し細胞死を誘導した。さらに、TM-233はROSの産生を介し、プロテアソーム活性のうちキモトリプシン様活性とともにカスパーゼ様活性を抑制し、種々の骨髄腫細胞のみならず、ボルテゾミブ耐性骨髄腫細胞の細胞死も誘導した。また、TM-233の骨髄腫前駆細胞に対する効果についてSP分画を用いて検討を行なった。細胞周期チェックポイントキナーゼWEE-1阻害剤MK-1775は骨髄腫細胞のmitosisを介して細胞死を誘導した。DNA損傷を誘導する種々の薬剤とMK-1775の併用効果について検討したところ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とMK-1775の併用により、骨髄腫細胞は効果的に細胞死が誘導された。WEE-1阻害は、骨髄腫細胞におけるROSを介した直接のDNA損傷効果が関与していると考えられた。さらに、DNA修復機構に関与するRibonucleotide Reductase large subunit 1 (RRM1)をノックダウンすることにより骨髄腫細胞はG2/M期に細胞周期が停止し増殖が抑制され、細胞死が誘導された。これらの事実をもとにRRM1阻害活性を有するclofarabineにより骨髄腫細胞の細胞死が誘導される新たな事実を見出した。 本研究により見出された骨髄腫に対する新たな治療薬候補について、マウスモデルを用いたin vivoにおける効果を検討することにより、さらに臨床応用を目的にした研究を推進したいと考えている。
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