研究課題
悪性リンパ腫・骨髄腫は血液系腫瘍の過半数を占め、治療法の進歩にもかかわらず予後不良である。近年の遺伝子解析技術の進歩により、高頻度で起きる遺伝子異常が数多く報告されているが、どの遺伝子異常のどの組み合わせが腫瘍の発生や維持に重要なのかは不明である。私たちはレトロウイルスによる遺伝子導入法とイン・ビトロでの分化誘導法、マウスへの移植を組み合わせて、迅速に多数の遺伝子異常の組み合わせの機能評価を可能にするハイスループットシステムを独自に開発した。この方法では、マウスの脾臓細胞からナイーヴB細胞を採取し、CD40LとBaffを発現させた3T3細胞とサイトカイン(IL4, IL21)存在下で培養することによって胚中心B細胞を誘導する。こうして誘導した胚中心B細胞に、レトロウイルスベクターによって任意の遺伝子を発現させて、マウスに移植しリンパ腫の発生の有無をモニターする。その結果、び慢性大細胞型B細胞性リンパ腫で見出された遺伝子異常のうち、活性型CARD11とBCL6の2者で腫瘍発生に十分であることが明らかとなった。一方で、同じ系を用いることで形質細胞も誘導可能であるので、悪性リンパ腫モデル作成法同様に遺伝子導入して、その後に形質細胞への分化誘導を試みた。しかしながら、遺伝子導入後には形質細胞への分化誘導効率が大幅に低下し、結果として骨髄腫モデルの作成は困難であることが判明し、期間内には達成できなかった。これに代わる方法として、CD19Creマウスの骨髄細胞にLoxP配列を有するレトロウイルスベクターを感染させ移植することで、B細胞特異的に遺伝子発現させる系を構築した。本系ではB細部の分化が進むにつれ遺伝子発現が上昇するため、骨髄腫モデルを作成できる可能性があり、今後検討したい。
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