研究課題
目的:POEMS症候群は形質細胞増殖症(plasma cell dyscrasia)を基盤として、高VEGF血症と特定のモノクローナルλ鎖Mタンパクを伴い、多彩な全身症状を呈する予後不良な疾患であるが、わずかに存在する形質細胞がその疾患発症の鍵を握り、多発性骨髄腫に準じた自家末梢血幹細胞移植、サリドマイドなどの新規薬剤を用いた治療により、ADL、生存期間を改善しうることが示されてきた。しかしPOEMS症候群の発症機構は不明な点が多く、その治療においても移植後の再発・再燃が問題となることも明らかとなってきた。本研究では、自家移植後に次世代シークエンサーを用いた微小残存病変(MRD)の評価に基づいた地固め・維持療法の有用性を検討し、治療方針決定の妥当性、予後を解析することで、POMES症候群に対する新たな治療体系を確立することを目的とする。平成28年度:当科において移植を行ったPOEMS症候群の患者30例の治療前の治療前骨髄細胞保存検体からDNAを抽出し、次世代シークエンサーによるλ鎖遺伝子の検出を行った。免疫グロブリンλ鎖Vλサブクラスに対するdegenerative primerと共通領域に対すconsensus primerを用いて、λ鎖CDR領域をPCR法にて増幅し、次世代シークエンサーにて網羅的に解析を行い疾患特異的であるIGLV1-40またはIGLV1-44 germlineに由来するクローンを抽出した。同様に自家移植後、再発後、再発治療後検体を用いて経時的にMRDの検討を継続している。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に従い、概ね順調に経過している。POEMS症候群症例数を30例まで増やし、次世代シークエンサーにて解析を行い、臨床データとの関連性を明らかとした。
今後は、現在までに検出された疾患特異的IGLV1-40 またはIGLV1-44 germlineに由来するクローンと病勢に係る因子の抽出、関連性を経時的に検討する。同一患者の初発時、再発時の検討において、IGLV germlineのクロナリティの増減は血清VEGF値ともある程度相関を示すという結果が示されており、今後さらに、結果を基にした治療介入の適否、予後との関連性を検討し、論文化を進める。
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