研究課題
GVHD発症に関与するドナーT細胞についてより正確に評価するためには、アロ抗原特異的な細胞傷害活性を有し、かつ実際にGVHD組織に浸潤しているT細胞分画に着目して解析することが望ましい。本研究では、GVHD組織や末梢血からT細胞を採取しTCRクロノタイピングを行うと同時に、機能解析によりアロ反応性を有することが確認されたT細胞分画に限定したTCRクロノタイピングも行うことで、GVHD組織や末梢血などにおけるアロ抗原特異的T細胞頻度の経時的変化を明らかにし、さらに臨床経過と照合することで、GVHDの重症化や治療反応性を予測可能にするバイオマーカーの開発を目指している。今年度は以下の成果を得た。1. 造血幹細胞移植患者3名のGVHD組織(皮膚等)からT細胞を分離し、limiting dilution法を用いてT細胞をクローン化、増幅し、さらに患者とドナーの細胞を標的とするCr放出試験により、それらT細胞クローンのアロ反応性を評価した。2. 同じGVHD組織からRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いてTCRのtarget deep sequenceを行った。1で得たT細胞クローンのTCRをSanger sequence法で決定し照合することで、GVHD組織に浸潤するT細胞全体におけるアロ反応性T細胞の頻度(割合)を決定した。3. またそれらの患者の末梢血単核球を経時的に採取し、RNAを抽出し、TCRのtarget deep sequenceを行うことで、末梢血中の組織浸潤アロ反応性T細胞の頻度の推移を決定した。
2: おおむね順調に進展している
これまでのところほぼ計画通りに進捗している。解析した3名のうち1名については、組織浸潤T細胞全体におけるアロ反応性T細胞の頻度を既に決定済みであり、興味深い結果が得られている。ただし皮膚の生検検体は比較的得られやすいものの、今年度は肝GVHD組織を得ることができなかった。
実験方法は既に確立済みであり、今後はさらに多くの生検検体を解析するとともに、得られたアロ反応性T細胞の標的抗原の同定も進める。先述のとおり検体収集が今後の重要な課題である。HLA一致移植と不一致移植とで組織浸潤T細胞のTCRレパトアに差があるのか、それぞれ経時的にどのような変化を来すのか、標的とする抗原に一定の傾向はあるのかなどについても解析を進める。最終的には臨床経過と照合して新しいGVHDバイオマーカーの開発を目指す。
購入する予定だった物品(消耗品)が、当該年度内に納品することが不可能となり、その支払い予定額を次年度に繰り越したため。
上述のとおり、物品(消耗品)に使用する。
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