研究課題/領域番号 |
15K09499
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山下 浩平 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80402858)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 好中球細胞外トラップ / IgG4関連疾患 / 自己免疫性膵炎 / 形質細胞様樹状細胞 / 1型インターフェロン / IL-33 |
研究実績の概要 |
我々は昨年度、IgG4関連疾患の一表現型である自己免疫性膵炎(AIP)の病態形成において、好中球細胞外トラップ(NETs)によって活性化した形質細胞様樹状細胞(pDC)が1型インターフェロン(IFN)やB cell activating factor(BAFF)を産生することが極めて重要であることを、AIPモデルマウス(poly(I:C)処理MPL/Mpマウス)やIgG4関連疾患患者の組織・血液検体を用いて明らかにした(Arai Y et al. J Immunol, 195, 3033-44, 2015)。 今年度はこの所見を発展させ、NETsなどで活性化したpDCがinterleukin(IL)-33を産生することにより、AIPにおける膵臓の炎症や線維化をもたらすことを明らかにした。具体的には、①AIPマウスにおいて膵臓に浸潤したpDCが1型IFNおよびIL-33を産生すること、②AIPマウスにpDCまたは1型IFNの中和抗体を投与することにより、膵臓の炎症や線維化が劇的に改善すること、③抗ST2抗体によりIL-33のシグナル伝達を阻害することによって、同様にAIPマウスにおける膵臓の炎症や線維化が改善すること、を明らかにした。またAIP患者の膵臓においてもIL-33を産生するpDCの浸潤が認められることを示した。これらの所見から、AIPの病態形成には1型IFNやIL-33を産生するpDCが重要な役割を果たすと考えられた。本研究の成果は米国免疫学会雑誌に掲載予定である(Watanabe T, Yamashita K et al. J Immunol, in press.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の一つであるIgG4関連疾患の一表現型である自己免疫性膵炎の病態形成における好中球細胞外トラップの役割を解明し、昨年度その成果を論文発表することができた。今年度はこの所見を発展させて、好中球細胞外トラップなどにより活性化した形質細胞様樹状細胞が1型インターフェロンやIL-33を産生することにより、膵臓の炎症や線維化をもたらすことを明らかにした。この研究結果も論文発表予定(J Immunol, in press.)となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はもう一つの研究課題であるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の産生やそのシグナル伝達に関わる遺伝子改変マウスなどを用いて、好中球細胞外トラップの組織障害における役割について検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究計画課題の一つである「IgG4関連疾患の病態における好中球細胞外トラップの役割について」の実験が順調に進み、主として消耗品などの物品費が計画よりも少なくて済んだことにより次年度の繰り越し使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は残る課題の解明を目指して、消耗品などの物品費や実験動物管理料などに使用する予定である。
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