研究課題
がん治療用ウイルス(oncolytic virus: OV)療法は、新たな癌治療法として活発に開発が進められている。OV療法では、腫瘍細胞に対する直接的な殺細胞効果に加え、OVが腫瘍細胞にimmunogenic cell death (ICD)を誘導することにより、免疫学的な抗腫瘍効果が発揮される。遺伝子組換えherpes simplex virus (HSV)-1であるG47Δによるウイルス療法が造血器腫瘍に適用できるかどうかを明らかにするために、造血器腫瘍の細胞株と臨床検体を対象に、in vitroにおけるG47Δ感染と細胞死の有無を検討した。その結果、細胞株では様々な造血器腫瘍由来の11細胞株中6細胞株で、臨床検体では10例中6例で、G47Δの感染かつ細胞死を認め、G47Δによる直接的な殺細胞効果が示された。HSV-1のエントリーレセプターnectin-1, HVEM, non-muscle myosinの発現と感染との相関を検討したところ、nectin-1の発現と感染の有無に相関がみられた。さらにG47Δの感染が確認された細胞株を用いて、ICDのマーカーである培養上清中のHMGB-1及びATPの放出量を測定したところ、G47Δが殺細胞効果を示す細胞株において,感染後HMGB-1及びATPの放出を認めた。以上より、G47Δは造血器腫瘍に対するウイルス療法の手段として有用である可能性が示された。また、感染にはnectin-1の発現が重要であることが示唆された。今後、ICDを来した腫瘍細胞が樹状細胞に及ぼす影響と抗原のクロスプレゼンテーション、さらにマウスモデルによるin vivoでの抗腫瘍効果の検討を行い、造血器腫瘍に対するG47Δの臨床応用を目指す。
3: やや遅れている
平成27年4月に研究代表者が京都大学から香川大学に異動し、27年度は大学院生が帯同しなかったため、当初の計画より進捗が若干遅れている。G47Δが造血器腫瘍に応用可能であることを示す現象はデータとして得られたが、当初予定していたG47Δが免疫細胞を活性化する際の分子メカニズム、G47Δで死滅した腫瘍細胞由来の抗原が樹状細胞によって提示されるかどうかの解析を手がけるに至っていない。
平成28年4月に京都大学から香川大学に大学院生が合流したので、当初予定していた前記の実験を早急に行うとともに、マウスモデルの実験の準備を開始する。
平成27年4月に研究代表者が京都大学から香川大学に異動し、27年度は大学院生が香川大学に帯同しなかったため、多くの研究費用が旧所属先の京都大学でまかなわれた。また、研究の進捗も当初の計画より若干遅れた。
平成28年4月に京都大学から香川大学に大学院生が合流したので、当初27年度に予定していた未施行の実験を早急に行って遅れを取り戻す。
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