研究課題
造血器腫瘍に対するHSV-1ウイルス療法の臨床応用を目指し、造血器腫瘍細胞株を対象に、G47Δと同様の遺伝子改変を施したHSV-1であるT-01の感染と殺細胞効果の有無を調べた。14種類の造血器腫瘍細胞株中、骨髄系、リンパ系を含む10細胞株でT-01の感染かつ細胞死を認め、直接的な殺細胞効果が示された。感受性細胞と抵抗性細胞の違いを検討したところ、HSV-1のエントリーレセプターnectin-1, HVEM, PILR-α, non-muscle myosinのうち、T-01に感受性のあるすべての細胞株でnectin-1の発現がみられた。一方、DNAウイルスゲノムを認識しI型インターフェロン産生を誘導する細胞質内核酸センサーであるcGASとSTINGの発現は、殺細胞効果と相関しなかった。T-01が感染し死滅した腫瘍細胞は、共存する樹状細胞の活性化・成熟を誘導した。T-01がin vitroでさまざまな系列の造血器腫瘍細胞に対し殺細胞効果を示したことから、G47Δが広汎な造血器腫瘍に応用できる可能性が示された。また、HSV-1レセプターとして働くnectin-1の発現が有効性のバイオマーカーになり得ることが示唆された。このことは、将来的にHSV-1ウイルス療法の有効例を絞る上で臨床的に有用である可能性がある。
3: やや遅れている
平成28年4月に京都大学から香川大学に大学院生が合流したので、当初予定していたT-01による樹状細胞の活性化を示す結果が得られるとともに、T-01に対する腫瘍細胞の感受性を規定する因子の同定が進み、全体として当初の予定に近づきつつある。
T-01に対する腫瘍細胞の感受性を規定する因子を分子レベルで詳細に同定する。また、平成29年3月に大学院生が連携研究者・藤堂具紀教授の研究室に赴き、担癌マウスを用いた実験の指導を受けたので、今年度はマウスモデルの実験を開始する。
平成27年4月に研究代表者が京都大学から香川大学に異動し、27年度は大学院生が香川大学に帯同しなかったため、多くの研究費用が旧所属先の京都大学でまかなわれた。それにより未使用研究費が生じた影響で、29年度への残額が生じた。
今後残りの実験を加速させることにより、研究費を有効に活用し研究成果をまとめる。
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Leukemia
巻: 31 ページ: 203-212
10.1038/leu.2016.174