研究課題
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)における補体による血管内溶血を、補体C5に対するモノクローナル抗体であるエクリズマブは、極めて有効にこれを阻止する。しかし、遺伝子多型によるエクリズマブ不応が存在することや、エクリズマブの効果が不十分な症例があり、現在様々な新規抗補体薬が開発中にある。これらの新規薬剤が実際にエクリズマブ不応例に効果があるのかを検証し、複雑な補体系の解明に繋げるのが本研究の目的である。本年度は、昨年入手した新規抗補体薬を用いて補体の活性化経路の解析手法を確立した。具体的には抗C5薬としてCoversin (Akari社)、RA101348 (RaPharma社)、Factor D阻害薬としてACH-4100(Achillion社)を、C1阻害薬として乾燥濃縮ヒトC1-インアクチベーター製剤(Berinert, CSL Behring社)を、C3阻害薬としてCompstatinを用い、C5、C8アプタマーに関しては、これらを作製し用いた。健常者、不応例(1症例)の血清を用いた実験で、各新規抗補体薬の溶血阻止効果が確認された。補体の活性化経路は抗原・抗体反応を起点としたclassical pathway、微生物の細胞表面に存在するレクチン・マンナンを起点としたlectin pathway、補体成分C3の加水分解により起こるalternative pathwayの3つが知られている。新規抗補体薬により、どのpathwayが影響を受けるかを詳細に解析するため、Wieslabのキットを用いて各活性化経路を独立して評価する系を確立した。
2: おおむね順調に進展している
現在までに新規抗補体薬として新規抗C5薬としてCoversin (Akari)、RA101348 (RaPharma)を2種、Factor D阻害薬としてACH-4100(Achillion社)を、C1阻害薬として乾燥濃縮ヒトC1-インアクチベーター製剤(Berinert, CSL Behring)を、C3阻害薬としてCompstatinを入手した。C5、C8アプタマーに関しては、これらを作製した。補体活性化経路(classical pathway、alternative pathway, lectin pathway)のうち、PNHにおける新規抗補体薬の候補はclassical pathway、alternative pathwayに影響する。そこで、各新規抗補体薬が生体内でどの経路にどのように影響を与えるかを評価するため、classical pathway、alternative pathwayに加え、lectin pathwayの評価系の樹立を試みた。健常人の血清と各抗補体薬を用いたin vitroの実験では、それぞれの補体経路が各抗補体薬によりblockされることが示され、この評価系が機能することが示された。また不応例(1症例)においてもin vitro溶血アッセイで、各新規抗補体薬の効果を認めた。
今後複数の不応例で新規抗補体薬の効果を検証し、また不応例の検体を用いて、各新規抗補体薬がどの補体経路に影響を与えるか、詳細に検討する予定である。
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